D「さっきのS先生の偶然たまたまラッキーにも○○病診断したなんてレアな武勇伝は、「やってもよい自慢話」だ」
S「なんで、そうネチネチと、、、」
D「文脈としては、○○病が先にあって、そこから派生した経験譚だ。だから、イヤミになりにくい。「そうそう、○○病と言えば、、、」という文脈に乗っかった形なので、こういう場合は研修医は「聞きたい」と耳をダンボにして話に注目するはずだ。実際、カンファ盛り上がっただろ?」
S「まあ、ぼくに気を遣ってくれたのかもしれませんが、、、」
D「お前は気を遣われるほど偉いと思われてない!」
S「ぐさあ」
D「というわけで、タイミングを間違えずに、文脈に乗った形での武勇伝、昔話、自慢話は使える。周りも不快にならない。お前の株も上がる。いいことばかりだ」
S「なるほど。無碍に否定する必要はないんですね」
D「ただし、使い方は間違えるな。頻用するとすぐに陳腐になるし、イヤミにもなる。基本的に全ての教育手法には賞味期限があり、使いすぎると使えなくなる。抗菌薬と一緒だな」
S「なかなかうまい喩えですね」
D「上から目線で偉そうに言うな!この自慢たらたらなイヤミ野郎が!」
S「褒めたんじゃないんですか?」
D「褒め上げてから、こき下ろす。このトスを上げてアタック的なバレーボール殺法は日本のマスコミの常套手段だろが」
S「別に日本のマスコミの手法を取らんでも、、、」
D「武勇伝ばかりでは人は食傷する。だから、武勇伝2,失敗談8くらいのほうがちょうどいい。このへんのバランス感覚は指導医講習会では絶対に教えてもらえない。失敗談で指導医に親しみを持ってもらう。それに失敗談は勉強になる。そして「こいつ、ダメな指導医だな」と思わせといて、ときどきズバッと鋭い刃を一閃させる。これでたいていの研修医のハートは鷲掴みだ。少女漫画の基本路線がそうだろ?嫌な男子だとまず思わせてから、ほろっと雨の日に迷子の子犬を抱き上げてやるんだよ、、、、」
S「何の話をしてるんですか?」
D「俺様がふだんS先生をこき下ろすのも、8割こき下ろしといて、2割ほろっと褒めると効果的だとわかってるからだ。この連載中、S先生を褒めまくってみろ。このブログはとてつもなくつまらない存在になる。保証する」
S「戦略的にこき下ろしてたんですか?」
D「ま、俺の気分転換、というところもあるがな」
S「がーん」
第72回「武勇伝2,失敗談8の法則」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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