S「D先生に言われたとおり、最近は論文ゴリゴリ読まなくなりました」
D「ふーん、自由な時間ができてよかっただろ」
S「そうですね。研修医も以前より論文読まなくてよくなってラッキー、S先生ありがとう、なんてお礼を言われたりして♡」
D「喜んでるのか?」
S「研修医によく思われるのが、なぜいけないんですか?」
D「いけないに決まってるだろが。お前はジャニーズか?AKBか?お前の仕事は研修医にモテモテの人気者になることじゃない、研修医がきちんと実力を伸ばすことだろが!」
S「いや、もちろんただの人気取りだとは言ってませんよ。でも、研修医が気持ちよく研修できるっていいじゃないですか」
D「バーカ、あいつらは単にサボれるから喜んでるだけだ。一度、病院最上階からゴムなしでバンジージャンプやって頭頂部に素敵な衝撃でも食らってみるといい、少しはましになるだろう」
S「なんですか?それ」
D「研修医にはゴリゴリ論文読ませなきゃ、ダメじゃろが!」
S「前言撤回ですか?横浜の教育委員長ですか?」
D「時事ネタはブログあとで読んだ人には意味不明だろうが」
S「だって、D先生は先日、論文ばっか読んでんじゃないってぼくを叱ったじゃないですか」
D「そ~れ~は~お前に対してだ。研修医に同じ扱いにしてどうする?」
S「だって~~~」
D「論文を取捨選択できるのは、論文をスキャニングできるようになったからだ」
S「え?(ギクウ)」
D「さらさらっと雑誌をめくって読むべき論文とそうでないものを峻別できるようになって、初めてゴリゴリ読む必要はない、と悟る」
S「ま、まあそうですね」
D「飛ばし読みでスキャニングできるのは、精読がちゃんとできるからだ。精読できなきゃ、ポイントなんてわからないだろ」
S「はい」
D「そもそも臨床的に価値のある論文か、そうでない論文かを峻別するためには、いろいろな論文を読まなきゃわからないだろうが。研修医のときは、ガンガン論文読ませるんだよ。そして、目を養うんだ。スラスラ論文を読めるようになって、初めて飛ばし読みや流し読みや、選択的に集中して読む技法が備わる。基本が身についてないのに、応用問題解かせてどうする?それで研修医に楽をさせて、人気のイケメン、学歴主義のブタ野郎になっていい気になってるんだから、まったくお目出度いったらありゃしない」
S「えーん、そこまで言わんでも~」
D「研修医に嫌われたっていいんだ、顎を出して吐くまで論文読ませまくれ!」
S「はい~~~!」
D「ちょっと待て、話はそれで終わりじゃない。大事な話には必ず例外事項はあるんだ」
S「え~、ややこしい」
D「大切な話は全部ややこしいんだ!サボるんじゃない。いいか、論文はゴリゴリ読ませろ。ただし、1年目のドクターはまだでいい。あいつらは論文なんて読ませなくてよいから、時間があればベッドサイドに行かせろ」
S「そうなんですか?」
D「ものには段階というものがある。1年目に必要なのは「一般的な医学知識」じゃない。患者をよく知るスキルを身につけることだ。診断や治療については指導医が教えればいいから、そのかわり患者のことは誰よりも知っている、そんな存在になるべきだ。本を読む暇があったら、患者のところへいけ!」
S「はじめてまともなコメントが~」
D「黙れ、ブタ野郎!」
第55回「論文を読ませよう、そして書かせよう」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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