5年生のBSLでは学生が担当した患者から質問を抽出し、その答えをA41枚にまとめるレポートを提出させてきました。レポートは後期研修医(フェロー)などがスーパーバイズし、完成したレポートは金曜日に岩田が審査し、合格者は名前を外してブログにアップ、不合格者はやりなおし、というルールでした。
このレポート作成の目的は、
1.医学生は一般に患者やケースから質問を抽出する訓練を受けておらず、その能力が低い。よって患者のプロブレム・リストも作れない。
2.自分がもった疑問を定式化する訓練を受けていない。
3.定式化した質問に対して答えを得る技術がない。論文検索や教科書、論文の精読能力が低い。
4.簡潔に序論、本論、結論と論理的に整合性があり、かつつながりのあるレポートを書く能力が低い。
5年生になるまでにそのような訓練を十分に受けていないのは問題であり、臨床現場でこのような能力がないのは致命的なため、レポートを課すことにしたのでした。ここ数年、レポート作成の質はだんだん改善しており、一定の教育効果が出ていたものと喜んでいました。
しかしながら、このレポートに5年生はかなり苦労していることもヒアリングから分かりました。毎日深夜まで図書館にこもってレポート作成に尽力している学生もいました。
しかし、本来、レポート作成の目的は「医師になった時に困らないための能力づくり」です。A4一枚のレポートを作るために毎晩深夜まで努力しないといけないのでは困ります。そのような状態では、臨床医になった時の多忙さではとても問題抽出と問題解決はできません。よって、自分のかかえた問題は「ほったらかし」になるリスクがあります。それに、実習の意識がレポートに行き過ぎて、ベッドサイドでの患者診療がおざなりになっては本末転倒です。学生が健全な時間配分で教育を受けるというのも大切です。
よって、今週から学生はスマホなどで時間管理し、週に5時間だけをレポート作成のために費やす時間とするようルールを新たにしました。学生は5時間以上かけてレポートを作成してはいけません。もし金曜日に未完成であれば、そのまま提出します。完成し、かつ合格レベルのレポートのみをブログにアップします。未完成、不合格レベルのレポートは再提出を不要とします(未完成者が不当に得をするアンフェアネスを回避するため)。
これまでと異なり、学生には問題の定式化、情報収集に加え、タイムマネージメント能力が求められます。もちろん、ズルをすればすぐにバレますので。
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