注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
CRBSI(カテーテル関連血流感染症)は予防できるのか。
CRBSIは、カテーテルの普及とともに増加している傾向にあり、医療行為により発生することから、CRBSIの予防は徹底して行われるべきである。今回、そのCRBSIの予防について、実際に達成することができるものであるのか考察した。
CRBSIの予防としては、バンドル戦略(諸対策の一体的な実施)が推奨されており、その諸対策としては、カテーテルの挿入・維持管理を行う医療従事者の教育・訓練、中心静脈カテーテル挿入時のマキシマルバリアプリコーションの使用、皮膚消毒のための>0.5%クロルヘキシジンアルコールの使用、感染予防策としての中心静脈カテーテルのルーチン交換の回避などが挙げられる。また、これらのバンドル戦略の遵守率の記録・報告も重要であるとされている(1)。そこで、Jamesらは中心静脈ラインのバンドルを評価し、CRBSIが減少するかどうかを観察した。ICUに入室した全患者に対して、2008年1月から2009年3月まで中心静脈ラインバンドルを適用し、2006年1月から2007年12月のCRBSIの発生率のデータを集計し、カテーテル留置1000日あたりのCRBSIの発生件数を比較することで介入の効果を検討した。その結果、ICUにおけるCRBSIの発生率が9.0から2.7(件/カテーテル留置1000日)に低下し、CRBSIが有意に改善した(P<0.0001)。原因菌の割合としては、グラム陰性菌の割合には有意な変化がみられなかったが、グラム陽性菌による感染症の割合は低下し(P=0.05)、真菌による感染症の割合は上昇した(P=0.04)。よって、中心静脈ラインバンドルの適応により、CRBSIの減少と予後の改善がみられた(2)。
以上のことから、CRBSI予防のバンドル戦略により、CRBSIの予防は可能であるといえる。ただし、この結果はバンドル戦略の徹底が前提にあるため、バンドル実施のフィードバックが重要であるといえる。
〈参考文献〉
(1) Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections.
O'Grady NP, Alexander M, Burns LA, Dellinger EP, Garland J, Heard SO, Lipsett PA, Masur H, Mermel LA, Pearson ML, Raad II, Randolph AG, Rupp ME, Saint S; Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee.
Am J Infect Control. 2011 May;39(4 Suppl 1):S1-34.
(2) Reduction of catheter-related bloodstream infections through the use of a central venous line bundle: epidemiologic and economic consequences.
Kim JS, Holtom P, Vigen C.
Am J Infect Control. 2011 Oct;39(8):640-6.
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