注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
壊死性筋膜炎におけるデブリドメントまでの時間と生存率の相関について
壊死性筋膜炎は皮下組織や筋膜の広汎な壊死を特徴とする感染症である。また身体所見は軟部組織の浮腫と紅斑以外にはほとんど見られないことが多い。死亡率は15~34%に及び、外科的な介入が行われなければほぼ100%である。救命のためには早期に外科的なデブリドメントを行う必要があるが(1)、この時どの程度デブリドメントが遅れると有意的な差がでるのだろうか。そこで外科的デブリドメントまでの時間と生存率の相関について調べた。
Kuoらによって3施設で1997年から2005年にかけて治療された壊死性筋膜炎の患者67人に対して、後ろ向き研究を行った。このとき、24時間以内にデブリドメントを受けた集団の死亡率は4.9%,、24時間以降にデブリドメントを受けた集団の死亡率は23%であった。 (3)(P=0.005)。前者は一般的な致死率とは異なるが、両グループとも全身状態の管理と積極的な栄養療法を行ったことにより死亡率が改善しているものと考えられる(2)
Juliaらは2施設で1958年から1982年にかけて治療された21人の患者に対して後ろ向き研究を行った。そして、デブリドメントまでの時間と死亡率について調べたところ、24時間以内にデブリドメントを施行された患者の死亡率は36%、24時間以降にデブリドメントを施行された患者の死亡率は70%であった(3)。
以上より、デブリドメントまでの時間に関しては、24時間以内の遅延に関しては不明だが、24時間を越えると、生存率に大きな差が出てしまうことが分かった。つまり、壊死性筋膜炎に対しては、その日の内にデブリドメントを行うことが必要であるといえるだろう。
(1)ハリソン内科学 第4版p900,935
(2) Kuo YL, Shieh SJ, Chiu HY, Lee JW. Necrotizing fasciitis caused by Vibrio vulnificus: epidemiology, clinical findings, treatment and prevention. Eur J Clin Microbiol Infect. 2007 Dis ; 26: 785–792.
(3)Frieschlag JA, Ajalat G, Bussutil RW. Treatment of necrotizing soft tissue infections; The Need for a New Approach.Am J Surg. 1985;149(6): 751-755.
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