日本は結核診療の歴史が長く、また患者数も相対的には多いということでエキスパティースが高いところもある。
その反面、お家芸というか、口承伝統芸能的なところもあって、いい加減なプラクティスも横行していた(している)。
「オレはツ反強陽性だからN95は要らない」と言われてひっくり返りそうになったこともあるし、「挿管されてる患者だから排菌してても隔離は不要」と大まじめに言われたこともある。「画像で結核とそうでない病気を区別できる」という大家にもお会いしたことがある。「old TBは活動性結核の存在を否定しない」とか、「画像で活動性結核は除外できない」というメッセージもなかなか定着しない。10年以上前に論文に書いたのだけど、全然日本にはインパクトがない。これが非専門家となるともっと危うくてリファンピン単剤で活動性結核を治療しようとしたり、もうなんなんでしょ。
とはいえ、最近でこそ、倉原先生みたいなラショナル、リーズナブル、エビデンス・ベイスドな若手が増えてきて、「8時間以内の結核曝露なら大丈夫」みたいな「3秒ルール」もどきのガセネタはまっとうに反駁されるようになった。事態は徐々に改善している。
で、本書である。表紙からはどのような方向性なのかは読めなかったが、倉島先生が編集していて、かなりまっとうな本である。「画像で結核は除外できない」「結核患者に対しては積極的にHIV検査を行うべき」といった、常識なんだけどわりと日本では無視されている点についてはっきりコメントされており、安心して読める。制度について、疫学についてはとても詳しくて参考になる。外来で治療できる条件についても明記してあり、日本でやたらと長い結核の入院期間に対する提言ともなっている。
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