注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
帯状疱疹は潜伏感染しているVZVが神経節後根から再活性化して引き起こされる散発性の疾患であり、しばしば重度の疼痛を伴う片側皮膚にできる水疱性の発疹を特徴とし、50歳代とそれ以上の年齢層の発生率が最も高いとされている。免疫不全患者やAIDS患者は帯状疱疹を繰り返し、症状も免疫正常者より重症になることが知られている。
プレドニゾロンの全身投与は、細胞免疫を抑制することによりウイルス感染のリスクを用量依存的に増加させる。1)Saag KGらによってRA患者を対象にしたプレドニゾロンの低用量長期投与の毒性を調べる後ろ向きコホート研究が行われた。プレドニゾロンの低用量(6.1±3.1mg/day)長期投与(6.2±4.6years)を行った群とプレドニゾロンを用いなかった群を比較すると、骨折、感染症、消化管障害といった副作用の発症とプレドニゾロン内服に相関性が見られた。また、5mg/day以上のプレドニゾロンの低用量長期投与は用量依存的に感染症をはじめとする副作用の発症と相関することがわかった。2)
IDSAガイドラインでは、プレドニゾロンの低用量長期投与などの低度免疫不全状態を引き起こす治療を受ける60歳以上の患者は、帯状疱疹ウイルスに対する免疫の有無によらずプレドニゾロンの投与開始4週間以前までにワクチン摂取を行うことを推奨している。3)4)
また、2007年1月1日から2009年12月31日までの期間でCalifornia large health planに加入した免疫不全患者を対象に行った帯状疱疹ワクチンの有用性を調べる調査研究において、ワクチンを摂取した群の方がワクチン摂取しなかった群に比較して帯状疱疹の発症率が著明に減少した(hazard ratio 0.45;95% CI 0.42-0.48)。特に60歳から80歳の層においてその効果が著明であった。5)
しかし、帯状疱疹ワクチン接種は患者の年齢や免疫の程度により決まる。高度免疫不全状態の患者においてはワクチンの投与は行ってはならないことになっているが、治療のため早期にプレドニゾロンの低用量長期投与を開始しなければならない症例に対する帯状疱疹の予防策については明確な指標は示されていない。
1) Up to date “Glucocorticoid effects on the immune system”2014/12/16
2)Low dose long-term corticosteroid therapy in rheumatoid arthiritis;An analysis of serious adverse events
The American Journal of Medicine volume96 issue2,February 1994 page115-123
Kenneth G.Saag.M D , Rochelle Koehnke.R.N , Jacques R Caldwell,M D ,Richard Braisington,M D ,Leon F.Burmeiser,Ph D. ,
Bridget Zimmerman,Ph D ,James A Kohler,M A .Daniel E Frust,M D.
3)Up to date “Prevention of varicella-zoster virus infection:Herpes zoster”2014/12/16
4)Executive Summary:2013 IDSA Clinical Practice Guideline for Vaccination of the Immunocompromised
Host Clin Infect Dis(2014)58(3):309-318
Lorry G.Rubin, Myron J.Levin, Per I jungman, E.Graham Davies, Robin Avery, Martie Tomblyn. Athos Bousbvarous.
Shireesha Dhanireddy,Lilian Sung, Harry Keyserling,and lonsoo Kang.
5)Herpes zoster vaccine in older adults and the risk of subsequent herpes zoster disease.
JAMA 2011 Jan 12;305(2);160-6
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