シエラレオネに行ってた間に見ていたレポート。評価はしたのですが、ネット環境が悪すぎてブログに上げれませんでした(で、そのまま忘れてた)。学生から「おれらのも上げんかい」とすごまれたので(少し話盛ってますが)、慌ててアップします。
注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
腎膿瘍、腎周囲膿瘍を診断するために造影CT検査が最も有用な画像検査であるとされている。加えて、腎盂腎炎に対する抗菌薬治療に反応が全くない、又は遅い患者は腎膿瘍、腎周囲膿瘍が疑わしいとされる[1]。そこで、抗菌薬投与後何日間発熱が続いたら腎膿瘍、腎周囲膿瘍の可能性が高くなり造影CT検査を行うべきかを調べた。
急性腎盂腎炎患者の少なくとも70%以上の患者に発熱が認められる。カナダの市中病院に入院中の70人の腎盂腎炎の発熱患者に関する研究がある[2]。その研究によると、抗菌薬が投与された、腎膿瘍や腎周囲膿瘍を伴わない腎盂腎炎患者(38度以上の発熱を伴い、尿培養検査が陽性)の平均発熱期間は39時間であった。48時間以上発熱が持続した患者は70人中18人(26%)であり、72時間以上発熱が持続した患者は70人中9人(13%)であった。また、95%の患者が92時間以内に解熱した。
一方で、腎膿瘍、腎周囲膿瘍の患者の87%に発熱がみられる[3]。Soulen MCらによる、62人の入院中の急性腎臓感染症患者について調べた論文がある[4]。62人の内訳は、膿瘍が一つ以上見られる患者が36人、急性細菌性腎炎が17人、化膿性腎炎が5人、腎盂腎炎が4人であり、すべての症例で72時間以上の発熱が続いた。
上記の調査により、Soulen MCらによる論文で4人の腎盂腎炎患者に72時間以上の発熱が持続したものの、抗菌薬の治療を開始して72時間以内に解熱した場合には急性腎盂腎炎の可能性が高く、72時間以上の発熱の持続があった場合は、腎膿瘍、腎周囲膿瘍の可能性が高くなり、92時間以上発熱が続いた場合にはさらに可能性が高くなると考えられる。つまり、抗菌薬投与後72時間以上の発熱が続いた場合には造影CT検査を行い腎膿瘍、腎周囲膿瘍があるかを検査する必要があると考える。
[参考文献]
[1]Up To Date;”Renal and perinephric abscess”2014/12/15閲覧
[2] Behr MA, Drummond R, Libman MD, Delaney JS, Dylewski JS.
Fever duration in hospitalized acute pyelonephritis patients.
Am J Med. 1996 Sep;101(3):277-80.
[3] Lee BE, Seol HY, Kim TK, Seong EY, Song SH, Lee DW, Lee SB, Kwak IS.
Recent clinical overview of renal and perirenal abscesses in 56 consecutive cases.
Korean J Intern Med. 2008 Sep;23(3):140-8
[4] Soulen MC, Fishman EK, Goldman SM, Gatewood OM
Bacterial renal infection: role of CT.
Radiology. 1989 Jun;171(3):703-7.
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