注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「感染性大動脈瘤の診断における画像の有用性」
感染性大動脈瘤は全大動脈瘤の0.7~3%と比較的稀な疾患である。主な症状は発熱(75%)、胸背部痛(60%)、腹痛(20%)、悪寒(16%)などだが、瘤の存在部位により様々な症状の変化があり特異的ではないために診断はしばしば難渋することが知られている。死亡率は23.5~37%と高い疾患であるために、感染症状を呈する患者に大動脈瘤を発見した場合は感染性大動脈瘤の可能性を常に考慮しなければならない。特に既存の動脈瘤に感染が及んだものは破裂の危険性も高く致死率も23~60%と高いため早期診断、早期介入が必要となる。1)
確定診断は瘤およびその周辺組織より細菌が検出されること、および病理学的に感染症を疑うことによる。実臨床では臨床症状、血液培養、画像所見が診断には重要であるが、血液培養に関しては陰性となる症例も15~50%であり血液培養陰性だけではこの疾患は否定できない。画像所見で疾患を疑いかつ血液培養陽性と合わせ確診となるのが一般である2)。
超音波検査は瘤の大きさや存在の診断には有用であるが感染の有無や広がりの評価は難しい3)。MRAでは臨床症状に乏しい症例で感染性大動脈瘤を発見したとの記載がある4)。造影CT検査では血管径の推移や血管壁構造の異常、内膜の不整、瘤周囲のガスや軟部陰影、隣接臓器での炎症の広がりの評価が可能である。嚢状や分葉状の不整形態が93%で認められ診断に有用であるとの報告もある5)。
ここに6例ではあるがCT所見により感染性大動脈瘤が疑われたが血液培養で陰性を示した症例に対するPET-CT検査の有用性を示唆した報告がある。判定基準はSUVmax5.0以上の集積で診断、3.0未満で否定するものとした。結果は6例中4例が感染性大動脈瘤と確診され感染瘤に対しての手術が施行され、瘤壁培養では2例が、病理組織検査では4例全てが感染性大動脈瘤と診断された。否定された2例に対しては通常の手術が行われ、病理組織検査においても感染性動脈瘤は否定された。これにより少ない症例ではあるがPET-CT診断の正誤性が示唆された6)。
このような少ない症例研究だけでPET-CTによる画像診断の有用性があると言うには拙速であろう。今後は様々な施設で感染性大動脈瘤のPET-CTによる画像診断研究が行われ、有用性が示されたならば、致死率の高いこの疾患が見逃されずに早期介入も可能になる。そうすれば感染性大動脈瘤疾患が重症化することが少なくなり予後が良くなるであろう。PET-CTはCTでは見逃される感染性大動脈瘤を見つける可能性を秘めているのではないか。
【参考文献】
1.感染性大動脈瘤と感染性大動脈解離が疑われた高齢の3症例 (心臓 vol.42 No.10 2010)
2.Overview of infected(mycotic) arterial aneurysm (uptodate:Aug 20 2014)
3.Infected aneurysm(Angiorogy Frontier vol.9 no.2 P167
4.Mandell P997-998
5. Macedo et al :Infected aortic aneurysm:imaging finding.Radiology 2004231:250-257
6.感染性腹部大動脈の診断におけるPET-CT検査の有用性について(J Jpn Coll Angioi 2011,51:473-479)
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