献本御礼。ベンティレーター触っていないぼくに贈ってきたということは、宣伝しろということですね。というわけで、宣伝。
実際のところ、ぼくが人工呼吸器についてはいろいろ議論することは多い。この人、もう少しFiO2下がんないかな、とか、抜管してればVAP起きなかったのに、とか。ベンティレーター扱っているドクターも「見よう見まね」のことはとても多く、それはほとんどがプロではないからで、このへんの事情は「抗菌薬の使い方」と同じである。問題症例にはよくうちあたる。だから、こういう門外漢でも読みやすいテキストがあると本当にありがたい。「オレは分かっている」というドクターもぜひ一度は手にとっていただきたい。案外我流になっていることは多いものだ。
それにしても、人工呼吸について勉強するのは楽しい。呼吸生理そのものが勉強していて楽しいし、酸・塩基平衡も、血ガスの解釈も楽しい。それが臨床的に役に立つとさらに楽しい。良書は難しいことは難しく、しかし易しいことは平易に書かれており、本書もご多分にもれずとても理解しやすい良書である。ぼくが読んで理解できるのだから、間違いない。著者のレクチャーとかをぼくが聴いていたという条件はあるとはいえ、素人が読んで「ふ〜ん、納得」と思わせるのは並大抵の筆力ではないのである。
呼吸=肺とは考えない
SpO2だけで重症かどうか判断しない
人工呼吸器は肺を良くはしないが、悪くはできる
正常な血液ガスを目標にしない
人工呼吸器に患者を合わせるのではなく、患者の呼吸に人工呼吸器を合わせる
といった至言も医者の頭と精神を刺激するのに十分だ。ぼくは素人なのでAPRVのような設定はご多分に漏れず苦手なのだが、本書を読めばガッテン、納得である。良書とは概念の分類が上手にスマートにできている本だと換言してもよいのである。現場で陥りやすいピットフォールも満載である。
巻末のケーススタディーも、「こういうケースあるよねえ」というICUでの懐かしいパターンばかりで遠い目をしてかつての日々を振り返った。信じてくれてもくれなくてもよいけれど、かつてぼくは著者と一緒にICUローテをしていて、しかも僕の方が上級医だったのである。そりゃ、やりにくかったぜ。
ときに、p316はもちろんミススペリングである。このことは何を意味しているかというと、本書がとっとと売れて、さっさと版を重ねて訂正しましょうね、という著者のhidden messageなのである、たぶん。
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