注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
DSM-5とDSM-Ⅳの違いについて(うつと周辺疾患に関して)
DSM-5ではうつ病を4つに分類する。
A.Disruptive Mood Dysregulation Disorder(破壊的気分調節不全障害)
B.Premenstrual Dysphoric Disorder(月経前不快気分障害)
C.Major Depressive Disorder(大うつ病性障害)
D.Persistent Depressive Disorder(持続性うつ病性障害)
変更点は①AとBが新設されたこと、②Cの診断基準から「死別反応(親しい他者を喪失した個人の反応)の除外」という項目が削除されたこと、③Cの随伴症状である「産後うつ病」が「出産前後のうつ病」に拡大されたこと、④DSM-IVで定義されていた気分変調性障害と慢性大うつ性障害が統合されてDができたこと、があげられる。
① 破壊的気分調節不全障害とは、通常のストレッサーに対する重度で反復する不機嫌の爆発が特徴であり、その爆発の間欠期も、イライラ、怒り、あるいは悲しみなどが続く状態である。児童期の双極性障害は成人のものとは異なった臨床像(たとえばうつ病相と躁病相が明瞭に区別しにくく,双方の症状が混在する多彩な病態)を呈することが多く、正しく診断されないことがあったため、この項目が新設された。またその病因の解明および治療に関する新たな発見に役立てる目的もある。
月経前不快気分障害は月経前だけに起こるうつ病で、月経の7-10日前に症状が出始め、月経開始とともに症状は消える。だるさやむくみ、不安感など月経前に心身に症状が出る月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)に比べ、精神的な症状が重い。精神症状としては、強い抑うつ(悲壮感)、絶望感、緊張感、不安感などがあり、身体症状としては、腹部膨満感、動悸、頭痛、乳房の張り・痛み、関節痛などがある。
② 死別反応は今回の改訂で大うつ病性障害に含まれるようになったと考えられる。
③ DSM-IVでは「産後うつ病」が扱われていたが、出産後だけではなく妊娠中からでも気分変動は生じることから、期間を拡大し、妊娠中・出産後4週を含む「出産前後のうつ病」と改められた。
④ DSM-IV の気分変調性障害(ほぼ1日中持続する抑うつ気分が長期間続くが、抑うつ状態にはならない慢性疾患)と慢性大うつ病性障害(抑うつ状態になる慢性疾患)が統合されることで、大うつ病性障害よりも期間の長い慢性の経過があり、抑うつ状態の有無を問わないうつ病性障害を、持続性うつ病性障害とする概念ができたと考えられる。
参考文献・URL:
うつ病診断とDSM-5 小山司 医療ジャーナル社 2013
http://kongoshuppan.co.jp/dm/dm.php?cd=1220_1(2013/12/04閲覧)
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-001.html(2013/12/04閲覧)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131105/bdy13110508540001-n1.htm(2013/12/05閲覧)
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