注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
四物湯は地黄剤と呼ばれる漢方薬群のうちの基本となる処方の一つであり、補血の基本薬である。補血薬とは肝や腎の機能を高め自然治癒力を高める薬をさし、血虚の状態の時に用いられる。
血虚とは大病後や産後など病み衰えた状態のことを指す。具体的には顔色が悪い、皮膚が乾燥している、ふらつく、筋肉の痙攣がある、月経異常などの症状が挙げられる.
ツムラ四物湯では7.5g中、ジオウ3.0g、シャクヤク3.0g、センキュウ3.0g、トウキ3.0gの割合の混合生薬の乾燥エキス2.75gを含有する物とされている。
四物湯は血に作用する生薬のみを集めた処方である。漢方の考え方では血虚の際、血を補うだけでは停滞してしまうので、血を巡らせる必要がある。シャクヤク・ジオウは補血・養血(血を作り補う)の役割を果たす。トウキは補血作用に活血作用を併せ持つ。センキュウは活血作用が中心で補血作用はない。このように四物湯は補血が中心の処方であり、若干の活血作用を持っているバランスのとれた処方である。しかし、四物湯だけでは血を巡らせるために必要な気を補うこと(補気作用)ができないので単独で使用されることは少ない。
四物湯は月経調整に働くが、間接的には補血の効果で内分泌系・自律神経系の失調を改善し、直接的には子宮筋に作用することにより効果を生じると考えられている。シャクヤク・トウキ・センキュウが子宮筋の弛緩に働き、トウキ・センキュウは緊張の強いときには弛緩に、緊張が弱いときは収縮に働くという調整作用をもっている。これら三薬が協同して調節的な効果を生じると考えられている。
また、四物湯は皮膚科領域においてもよく用いられる。血行を改善することで皮膚を再生させる効果があると考えられている。特にアトピー性皮膚炎や乾皮症に用いられるが、単独で用いられることは少ない。皮膚症状を改善する目的では黄連解毒湯を四物湯に合わせた処方となっている温清飲などがより効果的であると考えられている。
【参考文献】
新版漢方医学/財団法人 日本漢方医学研究所/1986
実践 可能ガイド 日常診療に活かすエキス製剤の使い方 / 医学書院/2010
漢方・中医学講座−治療編 基本15処方から始める/医歯薬出版株式会社/2009
漢方治療入門講座/井上内科クリニック:http://www.inoue-clinic.net/
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