尋常性痤瘡について
尋常性痤瘡は、脂腺性毛包に発症するごくありふれた皮膚疾患で、思春期の35~90%が有し、成人の正確な有病率は不明であるが、自己申告によると20代で43~51%、30代で20~35%、40代で12~26%、50代以上で7~15%が有していると報告されている1)。痤瘡が生じるのは,毛包脂腺系が皮脂および落屑したケラチノサイトの栓で閉塞し、正常皮膚の嫌気性菌であるプロピオニバクテリウム-アクネス(以下P.acnes)がコロニーを形成して時に炎症を起こした時である。また、テストステロンの分泌が高まる思春期になると、脂腺が肥大して大量の皮脂が産生され、さらに毛包開口部の閉塞を増幅させる。痤瘡は非炎症性のことも炎症性のこともあり、P. acnesが毛包の炎症を引き起こすかどうかで症状は異なる。面皰は皮脂の栓が毛包内に詰まった状態で、非炎症性痤瘡の特徴である。炎症性痤瘡は、丘疹、膿疱、結節、嚢腫などを呈する。
症状としては、炎症性痤瘡は疼痛を引き起こすことがあるが、その他の痤瘡は基本的に身体症状を伴わない。診断は身体診察で行うが、ステロイド酒さ炎や痤瘡様薬疹などとの鑑別に留意して、内服歴を聴取する必要がある。また、痤瘡は面皰数、炎症病変数、総病変数などによって軽症・中等症・重症に分類される。予後は良く、通常20代前半までに自然消褪する。重症度は予後にも影響を与え、軽症であれば通常瘢痕なしに治癒するが、中等症から重症の炎症性痤瘡はしばしば瘢痕を残す。
治療について、面皰性痤瘡(非炎症性)についてはアダパレン(レチノイド製剤)単剤療法が厚生労働省の認可を受けている。5 つのRCT をまとめたメタアナリシスによると12 週間のアダパレンゲル0.1%外用により面皰数が58.1% 減少した2)。一方で、丘疹や膿疱など炎症性痤瘡を有する患者に対しては、皮膚に定着している炎症性P.acnesの数を減らす抗菌薬外用の併用療法を行うことが推奨されている。炎症性皮疹を主体とする痤瘡患者において、アダパレンゲル0.1% 外用とクリンダマイシンローション0.1% 外用の併用群、クリンダマイシンローション0.1% 単剤外用群の2 群間で比較したRCTによると、外用開始後4 週目には両群の効果発現に差が認められ、12 週目の面皰および炎症性皮疹数の減少率は併用群で42.5、55.0% であるのに対して単剤外用群ではそれぞれ16.3%,44.2% であった2)。
中等症の痤瘡は抗生物質の内服を用いた全身療法に最もよく反応する。有効な抗生物質としては、ミノサイクリンが最も推奨されている2)。重症の痤瘡に対してはイソトレチノインの内服が行われる。イソトレチノインはほぼ全例に奏功するが、催奇形性を持つため、妊娠可能年齢の女性には注意して投与する必要がある。
参考文献
1) up-to-date Pathogenesis, clinical manifestations, and diagnosis of acne vulgaris
2) 尋常性痤瘡治療ガイドライン 日本皮膚科学会
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