PEはありふれた疾患であるが、しばしば致死的な経過をたどる。また治療は抗凝固療法を行うが、それにより重篤な出血を引き起こすリスクが生じるために、疾患の有無を正しく判定することは、極めて意義の大きいことである。もし、患者に呼吸困難の出現や増悪、頻呼吸や原因が明らかでない胸痛があった場合は、PEを鑑別に入れ、臨床的な症状から検査前確率を推定する。また、ここでは臨床的予測ルールの1つであるWellsスコアシステムについて述べる。
所見 点数
DVTの臨床徴候もしくは症状 3.0
PEと同等以上の可能性がある疾患が無い 3.0
HR>100 1.5
長期同姿勢、または手術 1.5
DVTまたはPEの既往歴 1.5
血痰 1.0
活動性の悪性腫瘍 1.0
Wellsスコアシステムでは上記の所見があればそれに応じて右の点数を加算していく。鑑別疾患として重要なものは心不全、心筋梗塞、狭心症、肺炎、胸水貯留、気胸、無気肺がある。
合計点により6点以下、6点より高得点のグループに分け、6.5点以上のグループは確定診断へ、6点以下のグループはELISA方によるD-ダイマー測定によりスクリーニングを行う。ELISA法によるD-ダイマー測定の感度は95%と高く、除外診断に極めて有効である。D-ダイマー陰性であればPEをほぼ除外できる。
確定診断は画像により行う。画像診断には肺動脈造影、胸部造影ヘリカルCT、肺換気-血流シンチグラフィがある。肺動脈造影は従来からPE診断のgold standardとなっているが、造影剤やカテーテルによる患者への侵襲が強く、患者の状態を把握して行うべきである。画像上では血流の途絶や減弱、造影が欠損しているか否かを注意してみる。胸部造影ヘリカルCTについて放射線による被曝は常に考慮されるべきである。画像では、肺動脈もしくは下肢静脈血栓が描出される。診断の陽性尤度比は24.1、陰性尤度比は0.15と信頼性は高い。肺シンチグラフィでは換気シンチグラフィ画像と血流シンチグラフィ画像の対比を行う。それにより肺血流と換気野の状態について評価が可能となる。検査前確率が高い場合の確定診断、検査前確率が低い場合の除外診断に有効である。
参考 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版):日本循環器学会
Diagnosis of acute pulmonary embolism:up to date Ver25.0 閲覧 6/14
Overview of acute pulmonary embolism:up to date Ver21.0 閲覧 6/14
How I diagnose acute pulmonary embolism:blood2013 121:4443-4448
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