○DRESS患者の97%は皮疹を生じる[1]。典型例では麻疹状皮疹が顔、胴や四肢の近位部に生じる。そして、急速に瀰漫性に隙間なく広がり、濾胞を伴う紅斑へと発展する[2]。
DRESSを生じることのある薬剤として44種類の薬剤が紹介されているが、集められたDRESS患者172人のうち10%以上の原因となる薬剤として多い順にカルバマゼピン(47%)、アロプリノール(11%)、スルファサラジン(10%)、フェノバルビタール(10%)、ラモトリジン(10%)が挙げられる[1]。そして、被疑薬投与から3.9±2.3週間の間に95%の人が発症している[1]。
DRESS患者の随伴症状で、感度が比較的高い所見については、皮疹(97%:斑状丘疹状皮疹60% 、顔面の浮腫39%)、肝臓の異常所見(94%:肝機能マーカーの上昇59% 、肝臓腫大12%)、HHV-6の検出(80%)、好酸球増加症(>0.7×109/L)(66%)、38.5度以上の発熱(64%)、リンパ節腫張(56%)が挙げられる[1]。
○鑑別疾患[2]
① SJS(Stevens-Johnson syndrome)、TEN(Toxic epidermal necrolysis:SJS、TENは被疑薬の投与から普通4-28日後に生じ、90%以上で2箇所以上の粘膜で糜爛や潰瘍が見られる。DRESSでも50%の患者で粘膜病変が認められるが普通単一部位で糜爛にまで発展しない。検査に関しては、SJS、TENでは好酸球増加が見られず、白血球やリンパ球減少がみられる。
② AGEP(Acute generalized exanthematous pustulosis):AGEPでは被疑薬の暴露から通常3日以内に発症する。DRESSでは膿胞がしばしば見られるが、AGEPでは体表中に散らばる無数の膿胞状の皮疹が特徴的である。AGEFが内臓症状を示すことは稀である。
③ 好酸球増加症:皮膚症状としては紅斑が見られることがある。しかし、典型例では、DRESSと異なり、湿疹・苔癬化・皮膚描記による蕁麻疹・再発性蕁麻疹・血管性浮腫が見られる。皮膚所見以外では、通常、心臓・消化器・肺・腎臓・中枢神経といった多臓器に不可逆的な障害が見られる点もDRESSの所見と異なるといえる。
④ 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫:典型的な血管免疫芽球性T細胞リンパ腫は急性発症の全身疾患で、生検により確定診断できる。DRESSと同様、典型的な症状として、リンパ節腫大、肝腫大が挙げられる。しかし、DRESSと異なる典型的な所見として、脾腫、B症状、痒みを伴う皮疹が挙げられる。
⑤ Sezary症候群:典型的な症状として全身性紅斑が挙げられる。DRESSと異なり全ての患者で体表の少なくとも80%以上が紅斑に覆われる。末梢血でSezary細胞やCD4陽性のリンパ球増加を確認することで診断される。
⑥ ACLE(Acute cutaneous lupus erythematodes):麻疹様皮疹、発熱・リンパ節腫張を呈することがある。DRESSと異なり、皮膚症状は典型例ではUVによる誘発・増悪が見られ、疲労感、筋痛、対称性の小関節痛といった感冒様症状を訴える。血液検査にて自己抗体陽性となる。
○考察:皮疹を訴える患者に対し薬疹を想定し、DRESS、SJS/TEN、AGEPを鑑別に入れ、ここ数ヶ月以内の特定の薬剤暴露歴を聞く。その際、薬疹以外も念頭に入れ、皮疹の掻痒感の有無、日光との関係性、関節痛の有無を聞く。薬剤暴露歴があった場合、眼球・口腔粘膜の病変を確認し、下痢の有無を聞きつつ、顔面の浮腫・リンパ節腫張を確認する。その後、発熱を確認し、血液検査にて好酸球上昇・AST/ALT上昇を確認するといった手順を取りたい。リンパ節生検を用いる場合は限られてくるだろう。そして、発熱やリンパ節腫張や好酸球数変化等に着目したRegiSCAR’s scoring systemを利用することで、DRESSの可能性を4段階に分類することもできる。一方、AGEP、DRESS、SJS-TEN、その他の薬疹患者合わせた216名のうち、21%で少なくとも2疾患重複が示唆されるというデータ[3]の存在を知っておくことでクリアカットに診断ができるわけではないということも同時に理解しておきたい。
1: The DRESS syndrome: a literature review.(Am J Med. 2011 Jul;124(7):588-97. )
2: UpToDate「Drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms (DRESS)」
3: Toxic epidermal necrolysis, DRESS, AGEP: do overlap cases exist?(Orphanet J Rare Dis. 2012 Sep 25;7:72.)
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。