HIV感染者におけるMACの二次予防の中止基準
Mycobacterium avium complex(MAC)は全身の播種性感染により、HIV感染者における死亡率を上昇させるため、発症した場合は治療だけでなく、再発を防ぐ2次予防が必要である。U.S. Public Health Service and Infectious Diseases Society of Americaのガイドラインでは、①HAARTを12ヶ月以上行った、②CD4陽性細胞数が100 cells/μl以上の状態を6ヶ月以上維持した、③MACに起因すると思われる症状が見られない、という以上3つの条件を満たした患者においては、二次予防の中止が考慮できるとされている。このガイドラインを支持する研究には以下のものがある。
2002年に、7つのコホート研究が解析され、頻度の多いHIV関連の日和見感染症としてCMVの臓器内感染、クリプトコッカス症、MAC、トキソプラズマ脳症に対する二次予防がCD4陽性細胞数の安定後に中止された場合の、再発の起こりやすさが評価された。終末期に二次予防を中止した場合を除外するため、CD4陽性細胞数が50 cells/μl未満の患者は除外された。また、上記のガイドラインに則った治療が行われていた患者に限定され、フォローアップがされていないものや、治療中止の少なくとも6ヶ月前からのCD4陽性細胞数が入手できないものも除外されている。HAARTを受けていた19000人の患者のうち二次予防が中止された患者は述べ379名で、MACの治療を受けていた患者は103名だった。そのうち、MACの再発を起こしたのは2名だった。1名は維持療法中止前のCD4陽性細胞数が100 cells/μlを超えた期間が1ヶ月未満だった。もう1名は10ヶ月CD4陽性細胞数が100 cells/μl以上を継続していたにも関わらず再発が起きた。この患者はMACに特異的な免疫不全を持っていたことが明らかになった。
また、2000年にHavlirらによって行われた実験では、HIV感染者において、HAARTを行う前と行った後、またコントロールとしてHIV非感染者におけるMycobacterium aviumへのin vitroの免疫学的抵抗性を比較した。HIV非感染者の78%、HAARTを受ける前のHIV患者の47%で抵抗性が確認された。HAARTを行うと、HIV感染者の抵抗性は増加し、6ヶ月施行後にはHIV非感染者とほぼ同等の77%まで増加した。
以上より、ガイドラインの中止基準では、再発の危険性は存在するものの非常に低いと考えられる。2次予防の中止により、治療コスト及び副作用や薬物相互作用を減少させ、間接的に患者のquality of lifeを改善するとともに、服薬アドヒアランスも向上させることが期待できる。
出典:*Discontinuation of secondary prophylaxis in AIDS patients with disseminated non-tubreculous mycobacteria infection;J Microbiol Infect :2004;37:50-56 ,* Safe Interruption of Maintenance Therapy against Previous Infection with four Common HIV-associated Opportunistic Pathogens during Potent Antiretroviral Therapy;Annals of Internal Medecine:20 August 2002, Vol 137, No.4 , *Effect of Potent Antiretroviral Therapy on Immune Responces to Mycobacterium avium in Human Immunodeficiency Virus- Infected Subjects;Journal of Infectious Diseases.(2000)182(6):1658-1663.doi:1083/317620
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