検診のアウトカム
現在、わが国には様々な種類の健康診断が存在する。企業などで広範囲に渡って行うものもあれば、対象疾患を絞って行われるものもある(1)。健康診断の存在意義は無症状の対象の中から患者を見つけ出し、その患者の生命予後を良くすることにあると考える(2)。そのことを前提とした上でがん検診の対象疾患とされている乳癌、大腸癌、肺癌のアウトカムについて考察した。
まず、乳癌に関してだが、具体的には問診、視診、触診、マンモグラフィが行われている(1)。視診、触診、マンモグラフィを組み合わせた7年間の検診を行うことによって死亡率を34%減少させることができた(3)。また、視診、触診、マンモグラフィを組み合わせた場合と触診を行わなかった場合とでは死亡率に差はなかった(4)(5)。
次に、大腸癌についてだが、大腸癌のスクリーニングは問診と便潜血検査によって行われる(1)。この検査を行うことによって死亡率が30%減少することはすでに報告されている(6)(7)。
最後に、肺癌についてだが、肺癌検診としてわが国では問診、胸部エックス線検査、および喀痰細胞診を行っている(1)。胸部エックス線写真を用いた健康診断を行うことについての研究はさまざまに存在するが、健康診断を行った方が生命予後がよいという報告はされていない(8)。胸部エックス線写真と喀痰細胞診を合わせて行った場合と胸部エックス線写真のみの場合とで肺癌の診断率も死亡率も差を認められなかった(9)。さらに、4か月ごとに胸部エックス線写真と喀痰細胞診を6年間行った群と、年に1回胸部エックス線写真を用いて検診を行った群とでは、20年後には喀痰細胞診を行った群の方が死亡率は高かったという研究すら存在する(10)。
当たり前のように行われている健康診断の項目において、疑問の残るアウトカムしか示されていない項目も多々存在している。これらの項目に関して、診断をつけることを目的にするのではなく、良いアウトカムを出すことに重きをおいた健康診断を行う方がよいと思う。
参考: (1)厚生労働省 ホームページ http://www.mhlw.go.jp/
(2)Up To Date “Overview of preventive medicine in adults”
(3)Elwood M, Cox B, Richardson A. The effectiveness of breast cancer screening by mammography in younger women: correction. Online J Curr Clin Trials 1994; Doc No 121
(4)Up To Date “Screening for breast cancer: Evidence for effectiveness”
(5)Up To Date “Screening for breast cancer: Strategies and recommendation”
(6)Up To Date “Screening for colorectal cancer: Strategies in patients at average risk”
(7)False Negative Fecal Occult Blood Test May Be Associated with Increased Mortality from Colorectal Cancer. Dig Dis Sci. 2013 May 22.
(8)Up To Date “Screening for lung cancer”
(9)Berlin Nl, Buncher CR, Fontana RS, et al. The National Cancer Institute Cooperative Early Lung Cancer Detection Program. Results of the initial screen(prevalence). Early lung cancer detection: Introduction. Am Rev Respir Dis 1984; 130: 545
(10)Flehinger BJ, Kimmel M,Polyak T, Melamed MR. Screening for lung cancer. The Mayo Lung Project revisited. Cancer 1993; 72: 1573
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