CMV網膜症はAIDSの重大な合併症の一つであり、主にCD4+ T細胞が50/µl以下の患者のうち21%~44%に発症する。無治療の場合半年で深刻な視力障害や失明を生じる1)。
1) 臨床像
初期の眼底検査所見では、遠心性に広がった、小さく不透明な白色粒状の壊死組織が見られる。この壊死組織は糖尿病性網膜症などに見られる綿花状白斑(cotton wool spot)に類似したものであるが、より大きいのが特徴である2)。進行すると周囲の血管から出血したり、網膜浮腫を起こしたりする。病変部の解剖学的な位置や、網膜剥離の有無によっては中心視野のぼやけ•欠損、中心暗点、飛蚊症、光視症を来す。このうち、飛蚊症と光視症を訴えることが最も多い。また、中心窩と視神経周囲にまで病変が及んだ場合は重大な視力低下を来す。中心窩への炎症の波及は遅いが、治療しない場合着実に進行する。その他の症状としてブドウ膜炎や角膜内皮炎を呈する場合もある。網膜炎が、網膜剥離を引き起こすと急性の失明に至ることもある。網膜剥離は合併症として最も深刻なものであり、手術によりある程度の視力回復は望めるが完全な視力回復には至らない。網膜炎は通常は片側性であるが、治療を怠った場合両側性となり得る1)。
2) 診断
CMV網膜炎は他のCMV感染によって引き起こされる症状とは異なり、上記の臨床症状と眼底検査のみによって診断可能である。視覚異常の訴えがある場合には眼科医による眼底検査が必要である。診断の根拠となるのは特徴的な眼底所見である。黄白色の毛羽立った粒状の病変が特徴的で、時に出血を伴う。網膜の白さ・出血度・病変部の形状と場所から、比較的著しい変化を呈し浮腫性であるものと、比較的変化に乏しく顆粒状に見えるものの2つに大別される。網膜が白く濁っているほど重症度が高いとされる1)。
参考文献:
1) Up to date “Pathogenesis, clinical manifestations, and diagnosis of AIDS-related cytomegalovirus retinitis” last updated 9 13, 2012
2) Harrison’s internal medicine 18th edition p.1473-p.1474
3) Limaye AP, Huang ML, Leisenring W, Stensland L, Corey L, Boeckh M. Cytomegalovirus(CMV)
4) DNA load in plasma for the diagnosis of CMV disease before engraftment in hematopoietic stemcell transplant recipients. J Infect Dis 2001;183(3):377-82.
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