さて、今度は医者の方です。医者のほうでも待ち時間を減らす方法はいくつもあります。
ヒントはすでにこの連載でも提供しています。まずは、
・ちゃんと説明する
です。ちゃんと説明していたら時間がかかるじゃないか、と思ってはいけません。逆です。きちんと初診の時に説明し、「どういう場合はまた受診してください」という再受診の条件を説明しておけば、「昨日、近所のお医者さんのところに行ったのに、まだ治らない」といって病院にくる患者さんは激減します。この話は[心得1]でしました。
・検査を減らす。
血液検査もCTもMRIも患者さんでいっぱいです。でも、本当に検査が必要な患者さんはどのくらいいるのでしょうか。
安定している患者さんの場合、しょっちゅう血液検査や画像検査をする必要はありません。画像検査は放射線や造影剤などリスクも伴っていますから、必要最小限にする意味は大きいです。「見たいから見たい」「検査があるから検査する」というトートロジーに陥らないことが大事です。
とくに、検査には検査技師さんの労力が加味されていることに、医者はもっと配慮すべきだと思います。
研修医にはよく教えているのですが、検査は自動販売機のように、「ボタンを押せば、結果が出てくる」ようなものではありません。舞台裏ではたくさんの検査技師さんが手間隙をかけて検査結果を出してくれるのです。そのことに感謝の気持を込めて、彼らをアビューズしないように、大切に検査をお願いすることが医者の義務です。
今はそういう医者はみなくなりましたが、昔は症状もないのに毎週尿培養を出したりする、けしからんドクターがいました。症状のない患者さんのおしっこにたとえバイキンがいたとしても、それは治療の対象にはなりません。治療の対象にならないものを検査するということは、完全なる時間とお金と労力の無駄、ということになります。それを、医者自身が自らの努力でやるのならまだしも、検査技師に命令して強制的に(無駄な仕事を)させる、というのはまったくもってケシカラン話です。こういう医者は、ほんっっと、はよ辞めてくれ、とぼくは念を送っています(いました)。
・横幅を広げる。
ちょっとした目の赤み、ちょっとしたすりむき傷、ちょっとした肩こり、ちょっとこむら返り、腰痛、、、こういう患者さんをみんな「他の科に」回してしまっている専門医は少なくありません。そうすると受診回数が何倍にもなりますし、患者さんはたらい回し、、、待ち時間は指数関数的に伸びていきます。
もっとも、患者の方でも「これは脳の専門家に診てもらったほうがよいんじゃないか」と自らたらい回し状態を演出している場合もありますので、どっちもどっちですね。
・問題を全部解決しようとしない
入院患者さんはプロブレム・リストを作って問題全部解決、、、を目指すのが基本ですが、外来でそれをやるとtoo muchです。患者さんのほうもお腹いっぱいになっちゃいます。
ぼくの場合、外来の問題はせいぜい1,2くらいの前進を目指し、残りの問題は「次回以降」に先送りしています。問題先送りできるのは、外来診療の特権とも言えます。時間の節約にもなります。こういうところでも、医者はあまりマジメにやってはだめなのです。
いかがでしょう。待ち時間を伸ばしている要素はとても多いんですね。「こうすれば待ち時間問題は解決する」というシンプルなベストアンサーは存在しません。一枚一枚薄皮を剥ぐように、すこ~しずつよくしていくのが、一番の近道なのです。そういう細かい努力を面倒臭がらずにやることが、大事なのです。
うちの病院は昔からこうなっているから、と思考停止状態になっている医療者はとても多いです。昔からこうなってる、はこれからもこうしてよい、を正当化しません。昔からこうなってる、、、から今から変えようよ、、、と病院を少しずつよくしていきたいものです。
とはいえ!
医療というのは「想定外時が常態」なフィールドなので、なかなか予定通り進まないのは、構造上仕方ない部分もあります。美容院やネイルサロンとは違うのです。夜中に突然ネイルが必要になったり、緊急ネイルとか、ないでしょ(たぶん)。
急患が出たり、病棟の患者が急に悪くなったり、医療にはアクシデント、ハプニングがつきものなのです。予定調和的な外来はなかなか難しい。
そこで、患者の努力、医者の工夫以上の第三の道が必要になってきます。それは病院のシステム改善です。
ぼくが取り組もうとしているシステム改善の骨子は3つ。
1.予約患者と予約外患者の差別化
予約患者はとにかく優先的に診て、「予約をした」行為がちゃんと報われるようにします。予約がい患者は待たねばならない理由をご理解いただき、「次回からはちゃんと予約をとるよう」促します。
2.コメディカルの活用
すでに指摘したように、看護師にできることはたくさんあり、看護師が活躍することで医者は外来の本来業務に集中できます。事務補佐など、いろいろな職種の人がみんなで医者をサポートすれば、その分待ち時間は減り、患者もトクすると思います。
3.ファースト・トラック
緊急性の高い予約外患者を「別枠」で診る「ファースト・トラック」制度も有効です。ぼくがいたアメリカの病院では、これを救急のドクターがやっていました。ここでもいろいろな訴えに対応できる「横幅の広い」医者が活躍します。
それはそれとして、面倒くさくて意味の小さい書類も減らしてくれればいいな、といつも思っています。エイズの患者さんのために障害者用年金申請の書類を書きますが、一枚の紙に同じ血液検査の結果を3回書かなければなりません。嫌がらせだと思うのですが、厚労省にメールしても一向に改善してくれません。こういう「意味のない書類」が医療業界には満ち満ちています。厚労省の方は、なにかの書類を作ったとき、一回自分でシミュレーションして記載してみてください。けっこう、イラッときますよ。
ヒントはすでにこの連載でも提供しています。まずは、
・ちゃんと説明する
です。ちゃんと説明していたら時間がかかるじゃないか、と思ってはいけません。逆です。きちんと初診の時に説明し、「どういう場合はまた受診してください」という再受診の条件を説明しておけば、「昨日、近所のお医者さんのところに行ったのに、まだ治らない」といって病院にくる患者さんは激減します。この話は[心得1]でしました。
・検査を減らす。
血液検査もCTもMRIも患者さんでいっぱいです。でも、本当に検査が必要な患者さんはどのくらいいるのでしょうか。
安定している患者さんの場合、しょっちゅう血液検査や画像検査をする必要はありません。画像検査は放射線や造影剤などリスクも伴っていますから、必要最小限にする意味は大きいです。「見たいから見たい」「検査があるから検査する」というトートロジーに陥らないことが大事です。
とくに、検査には検査技師さんの労力が加味されていることに、医者はもっと配慮すべきだと思います。
研修医にはよく教えているのですが、検査は自動販売機のように、「ボタンを押せば、結果が出てくる」ようなものではありません。舞台裏ではたくさんの検査技師さんが手間隙をかけて検査結果を出してくれるのです。そのことに感謝の気持を込めて、彼らをアビューズしないように、大切に検査をお願いすることが医者の義務です。
今はそういう医者はみなくなりましたが、昔は症状もないのに毎週尿培養を出したりする、けしからんドクターがいました。症状のない患者さんのおしっこにたとえバイキンがいたとしても、それは治療の対象にはなりません。治療の対象にならないものを検査するということは、完全なる時間とお金と労力の無駄、ということになります。それを、医者自身が自らの努力でやるのならまだしも、検査技師に命令して強制的に(無駄な仕事を)させる、というのはまったくもってケシカラン話です。こういう医者は、ほんっっと、はよ辞めてくれ、とぼくは念を送っています(いました)。
・横幅を広げる。
ちょっとした目の赤み、ちょっとしたすりむき傷、ちょっとした肩こり、ちょっとこむら返り、腰痛、、、こういう患者さんをみんな「他の科に」回してしまっている専門医は少なくありません。そうすると受診回数が何倍にもなりますし、患者さんはたらい回し、、、待ち時間は指数関数的に伸びていきます。
もっとも、患者の方でも「これは脳の専門家に診てもらったほうがよいんじゃないか」と自らたらい回し状態を演出している場合もありますので、どっちもどっちですね。
・問題を全部解決しようとしない
入院患者さんはプロブレム・リストを作って問題全部解決、、、を目指すのが基本ですが、外来でそれをやるとtoo muchです。患者さんのほうもお腹いっぱいになっちゃいます。
ぼくの場合、外来の問題はせいぜい1,2くらいの前進を目指し、残りの問題は「次回以降」に先送りしています。問題先送りできるのは、外来診療の特権とも言えます。時間の節約にもなります。こういうところでも、医者はあまりマジメにやってはだめなのです。
いかがでしょう。待ち時間を伸ばしている要素はとても多いんですね。「こうすれば待ち時間問題は解決する」というシンプルなベストアンサーは存在しません。一枚一枚薄皮を剥ぐように、すこ~しずつよくしていくのが、一番の近道なのです。そういう細かい努力を面倒臭がらずにやることが、大事なのです。
うちの病院は昔からこうなっているから、と思考停止状態になっている医療者はとても多いです。昔からこうなってる、はこれからもこうしてよい、を正当化しません。昔からこうなってる、、、から今から変えようよ、、、と病院を少しずつよくしていきたいものです。
とはいえ!
医療というのは「想定外時が常態」なフィールドなので、なかなか予定通り進まないのは、構造上仕方ない部分もあります。美容院やネイルサロンとは違うのです。夜中に突然ネイルが必要になったり、緊急ネイルとか、ないでしょ(たぶん)。
急患が出たり、病棟の患者が急に悪くなったり、医療にはアクシデント、ハプニングがつきものなのです。予定調和的な外来はなかなか難しい。
そこで、患者の努力、医者の工夫以上の第三の道が必要になってきます。それは病院のシステム改善です。
ぼくが取り組もうとしているシステム改善の骨子は3つ。
1.予約患者と予約外患者の差別化
予約患者はとにかく優先的に診て、「予約をした」行為がちゃんと報われるようにします。予約がい患者は待たねばならない理由をご理解いただき、「次回からはちゃんと予約をとるよう」促します。
2.コメディカルの活用
すでに指摘したように、看護師にできることはたくさんあり、看護師が活躍することで医者は外来の本来業務に集中できます。事務補佐など、いろいろな職種の人がみんなで医者をサポートすれば、その分待ち時間は減り、患者もトクすると思います。
3.ファースト・トラック
緊急性の高い予約外患者を「別枠」で診る「ファースト・トラック」制度も有効です。ぼくがいたアメリカの病院では、これを救急のドクターがやっていました。ここでもいろいろな訴えに対応できる「横幅の広い」医者が活躍します。
それはそれとして、面倒くさくて意味の小さい書類も減らしてくれればいいな、といつも思っています。エイズの患者さんのために障害者用年金申請の書類を書きますが、一枚の紙に同じ血液検査の結果を3回書かなければなりません。嫌がらせだと思うのですが、厚労省にメールしても一向に改善してくれません。こういう「意味のない書類」が医療業界には満ち満ちています。厚労省の方は、なにかの書類を作ったとき、一回自分でシミュレーションして記載してみてください。けっこう、イラッときますよ。
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