さて、今日の話は。
あなたの後ろにも患者がいるのに気がつこう
の話です。
居酒屋のトイレにいくと、よくこういう張り紙が貼ってあります。
やおらかに 心静かに 手を添えて 外に落とすな 松茸の露
ま、意味の分からない人はスルーしてください。要するに、公共の場では自分のことだけでなく、後の人のことも考えましょうよ、という意味です。
これって外来についてもいえるのです。みなさんの前にもたくさんの患者さんがいますが、みなさんの後にもたくさんの患者さんがいます。あなたが後の人のことを配慮する。みんなが後の人のことを配慮する。こうすることによって、より待ち時間の少ない外来診療が可能になります。
例えば、ずっと長々と世間話をする患者さんがいます。たしかに、ぼくとしても患者さんの世間話にはずっと付き合っていたいです。わりと緩やかな診療所とかでは、こういうことも可能かもしれません。でも、忙しい病院ではこういうのは迷惑行為以外のなにものでもありません。後に重症患者さんが待っていたりすると、危険行為ですらあります。
今ではもうほとんど見なくなりましたが、公衆電話ってありますね。行列を作って電話を待っているのに、長々と無駄話をするのはマナー違反ですよね。そういう世間話は、世間話が許容されるような環境、、、例えば自宅で行うべきなのです。同様に、待ち時間の長い、患者の多い病院では、無駄話で外来を引っ張ってはいけません。後の患者さんの迷惑も考えてあげるべきです。
ぼくもあまりにも患者さんの世間話が長くなると、
「次の患者さんが待っていますので」
とやんわり席をたつよう促しています。
自分にとって快適な環境とは、自分もその快適さに加担し、参加することによって初めて成立します。清潔なトイレを使いたい、と思うのなら、自分もキレイに使う必用があるんです。
みんなで協力しあって、より快適な外来の空間を作りましょう。
他にも「後の患者さんのためにできること」はたくさんあります。例えば、
・お薬手帳は携帯し、今飲んでいる薬がすぐ分かるようにしておく。
・質問したいことをまとめておく。ちなみに一回の外来で解決できそうな問題はたいてい3つくらいまでです。紙やスマホに何十と問題点を列記してくる患者さんもいますが、そういう患者さんは、ほとんどの場合別の意味で「病んでいます」。
・次の予約日の目処を立てておく。「次の外来は、、、」と医者が促したとき、あわてて会社に電話して当番表を確認したりする患者さんは、けっこう(後の患者の)時間をロスしています。
あと、予約外受診は緊急時以外は避ける。急ぎでない幼児は、月曜日、とくに連休明けは避けるなどの工夫も有効です。あなたは混んでいる外来に来るリスクを回避でき、あなたが来ないことで周りの患者さんも助かります。混んでいない時間帯に(できれば予約をとって)おいでいただければよいのです。
とはいえ!
患者さんが医者に話をしてはいけない、ということはまったくありません。
ぼくらが診断したり治療するとき、一番パワフルなのは患者さんの言葉です。血液検査でもMRIでもありません。だから、患者さんが積極的に話をしてくださるのは、医者にとってはとてもありがたいのです。すくなくとも、まっとうな医者なら、そう考えます。
ただ、前述のように他の患者さんがたくさん待っているというのも事実です。やはり、医療とは関係ない世間話はほどほどにしておいたほうがよいでしょう。アベノミクスの話とか、昨夜のタイガースの話とか、昔のタイガースの話とか、沢田研二がボーカルのタイガースの話とか。
では、どのような話が大事で、どのような話は無駄かというと、この線引はとても難しいのも現実です。
たとえば、ぼくは患者の生活環境については詳しく聞く方です。仕事の内容、余暇の過ごし方、好きな食べ物、夫婦関係、学校でのストレス、嫁姑問題、給料、セクハラ、パワハラ云々、、、、
どうしてかというと、こういう情報が実は病気の遠因だったりすることはしばしばあるからなのです。一見関係無さそうな情報も、実はとても有用だったりするんですね。
というわけで、ゴルゴ13みたいに
「要件のみ聞こう」
とはなかなかいかない、のだ・・・・・・(ゴルゴ風)
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