ある病院における患者さんの「ご意見」ナンバーワンは、「待ち時間が長いこと」です。ホント、病院ってなんであんなに待たせるの?と思いませんか。
レストランだって、美容院だって、弁護士事務所だって、一般社会では
予約時間は守る
が当たり前です。こうしたところでは予約時間を超えて待たせるなんて普通はありませんし、突発的な事象で待たせたとしても、せいぜい10分くらいなものでしょう。
ところが、病院では9時に予約と言っておきながら、実際に診察が始まるのはお昼の12時だったりします。これじゃ、忙しいサラリーマンとかは容易に受診できませんし、ホント、困りますよね。
医者の方は、逆に患者は待つのが「当たり前」だと思っている人が多いです。変な話、マジメな医者ほどそう思っているところがあります。俺はこんなに一所懸命手抜きもせずに患者を診ているのだ。診察時間が長引けば、待ち時間が長くなるのも当たり前。しようがないじゃない、というわけです。
さて、はっきり申し上げておきましょう。僕の意見では、病院の待ち時間が長い最大の原因は患者さんにあると思います。
次いで、医者たち医療者。その次に病院のシステムの問題、で、さらに下がって医療制度の問題だと思います。
日本の人口一人あたりの外来受診数は13.2件(2009年)で、OECD加盟国ダントツのトップです(http://apital.asahi.com/article/sakai/2013011100005.html)。OECDの平均値が6.5ですから、その倍以上の受診ということになります。しかも、提供する側の医者の数は少なくて、人口千人あたりの医師数は2.2人しかいません(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1930.html)。医療過疎の地域ではさらに少なくなります。提供する側の数が少なくて、受診回数が多いのですから、そりゃ、待ち時間が長くなるのも当たり前です。
日本の患者さんはどうも「イラチ」な人が多いのか、病気をじっくり治すのが苦手なようです。それで、外来受診して、薬をもらって、数日たってもよくならないとまた別の病院に行く。で、受診数は増えていきます。
[心得1]でも申し上げたように、「二度目の受診」は同じ医者にかかったほうがうまくいく可能性は高いのですが、別の病院に行く。しかも、紹介なしで「いきなり」行くので、また同じ検査のやり直しになる。多くの患者さんはアポ無しで「いきなり」受診をするので、他の予約患者さんの待ち時間はさらに長くなります。
風邪には抗生物質は効かないという話をなんどかしました。ぼくも風邪をひきますが、病院には行きません。自然に治るとわかっているのに、わざわざ長い時間待って医者にかかって、さらに(副作用の懸念のある)抗生物質をもらうなんて、ぼくに言わせれば正気の沙汰ではありません。同様に、軽い下痢、軽い頭痛、軽いあれやこれや、、、、ではぼくは病院にいかず、「自然に治る」のを待ちます。要するに、自然に治る病気を慌てて治そうと無理をしないのが大事なのです。病院に行く必要があるのは、「自然に治らないような」重い症状、きつい症状に限定されます。
で、ぼくみたいな態度は別に変わった態度でもなんでもなく、日本以外の国ではたいていの人はそうしているのです。ぼくが変なのではなく、大多数の日本人がどうかしているのです、とぼくは思う。
病院での待ち時間が長い!と文句を言っているあなた。病院に行かなければ、絶対に待つ必要はありません。あなた自身がその「待ち時間」に参加していることは、ときどきは気づいていたほうがよいですよ。
とはいえ!
待ち時間が長い最大の原因は患者さん自身にあるとぼくは思います。でも、「唯一の原因」だとは、もちろん思いません。
まず、医者のほうですが、医者の時間感覚にはかなりの改善が必要です。医者は勤勉な人が多く、夜遅くまで病院で仕事をするのが「当たり前」だと思っています。その結果生じるのは、「時間というコスト感覚」の絶望的な欠如です。要するに、時間を効率的に使おう、とは思わなくなってしまってるんです。カンファレンスや回診も、上手にやれば短い時間で終わるのに、夜中までダラダラやっても平気、、、いや、そうやって遅くまで頑張ることで「頑張っているかわいそうで立派な俺」を演出している傾向すら、あります。
実は、ぼく自身もそういう「頑張っているかわいそうで立派な俺」を演出して、自己犠牲感満点のヒロイズムに酔ってた時代があったので(ああ、恥ずかしい、穴があったら入りたい)、こういう失敗はよく分かるのです。
繰り返します。外来患者の最大の苦情は「待ち時間が長い」です。なので、ぼくら医者も待ち時間を減らすよう、最大限の努力をしなければなりません。
その方法はたくさんありますが、一番効果的なのは、「無駄な検査を減らす」です。
とにかく病院は無駄な検査が多すぎ。まあ、病院の収益といったドロドロした話は今日は割愛しますが、それを差し引いても多すぎ。
「本当に必要な検査」に限定すれば、今の半分かそれ以下で大丈夫なはずですが、「検査があるから、検査する」のトートロジーに陥っている医者があまりにも多い。あと、問診と診察だけで診断できる病気も割と多いですが(全部じゃありません)、その能力が低い医者もあまりにも多い。そういう訓練、受けていないですから。しかも、そういう能力を欠いた医者ほど、忙しい大病院に勤務しているという皮肉も問題をさらに面倒くさくしています。
日本の待ち時間問題は複雑で、ひとつやふたつの方法で全部解決、というシンプルな話ではありません。でも、できるところから始めていく必要はあります。この問題、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
レストランだって、美容院だって、弁護士事務所だって、一般社会では
予約時間は守る
が当たり前です。こうしたところでは予約時間を超えて待たせるなんて普通はありませんし、突発的な事象で待たせたとしても、せいぜい10分くらいなものでしょう。
ところが、病院では9時に予約と言っておきながら、実際に診察が始まるのはお昼の12時だったりします。これじゃ、忙しいサラリーマンとかは容易に受診できませんし、ホント、困りますよね。
医者の方は、逆に患者は待つのが「当たり前」だと思っている人が多いです。変な話、マジメな医者ほどそう思っているところがあります。俺はこんなに一所懸命手抜きもせずに患者を診ているのだ。診察時間が長引けば、待ち時間が長くなるのも当たり前。しようがないじゃない、というわけです。
さて、はっきり申し上げておきましょう。僕の意見では、病院の待ち時間が長い最大の原因は患者さんにあると思います。
次いで、医者たち医療者。その次に病院のシステムの問題、で、さらに下がって医療制度の問題だと思います。
日本の人口一人あたりの外来受診数は13.2件(2009年)で、OECD加盟国ダントツのトップです(http://apital.asahi.com/article/sakai/2013011100005.html)。OECDの平均値が6.5ですから、その倍以上の受診ということになります。しかも、提供する側の医者の数は少なくて、人口千人あたりの医師数は2.2人しかいません(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1930.html)。医療過疎の地域ではさらに少なくなります。提供する側の数が少なくて、受診回数が多いのですから、そりゃ、待ち時間が長くなるのも当たり前です。
日本の患者さんはどうも「イラチ」な人が多いのか、病気をじっくり治すのが苦手なようです。それで、外来受診して、薬をもらって、数日たってもよくならないとまた別の病院に行く。で、受診数は増えていきます。
[心得1]でも申し上げたように、「二度目の受診」は同じ医者にかかったほうがうまくいく可能性は高いのですが、別の病院に行く。しかも、紹介なしで「いきなり」行くので、また同じ検査のやり直しになる。多くの患者さんはアポ無しで「いきなり」受診をするので、他の予約患者さんの待ち時間はさらに長くなります。
風邪には抗生物質は効かないという話をなんどかしました。ぼくも風邪をひきますが、病院には行きません。自然に治るとわかっているのに、わざわざ長い時間待って医者にかかって、さらに(副作用の懸念のある)抗生物質をもらうなんて、ぼくに言わせれば正気の沙汰ではありません。同様に、軽い下痢、軽い頭痛、軽いあれやこれや、、、、ではぼくは病院にいかず、「自然に治る」のを待ちます。要するに、自然に治る病気を慌てて治そうと無理をしないのが大事なのです。病院に行く必要があるのは、「自然に治らないような」重い症状、きつい症状に限定されます。
で、ぼくみたいな態度は別に変わった態度でもなんでもなく、日本以外の国ではたいていの人はそうしているのです。ぼくが変なのではなく、大多数の日本人がどうかしているのです、とぼくは思う。
病院での待ち時間が長い!と文句を言っているあなた。病院に行かなければ、絶対に待つ必要はありません。あなた自身がその「待ち時間」に参加していることは、ときどきは気づいていたほうがよいですよ。
とはいえ!
待ち時間が長い最大の原因は患者さん自身にあるとぼくは思います。でも、「唯一の原因」だとは、もちろん思いません。
まず、医者のほうですが、医者の時間感覚にはかなりの改善が必要です。医者は勤勉な人が多く、夜遅くまで病院で仕事をするのが「当たり前」だと思っています。その結果生じるのは、「時間というコスト感覚」の絶望的な欠如です。要するに、時間を効率的に使おう、とは思わなくなってしまってるんです。カンファレンスや回診も、上手にやれば短い時間で終わるのに、夜中までダラダラやっても平気、、、いや、そうやって遅くまで頑張ることで「頑張っているかわいそうで立派な俺」を演出している傾向すら、あります。
実は、ぼく自身もそういう「頑張っているかわいそうで立派な俺」を演出して、自己犠牲感満点のヒロイズムに酔ってた時代があったので(ああ、恥ずかしい、穴があったら入りたい)、こういう失敗はよく分かるのです。
繰り返します。外来患者の最大の苦情は「待ち時間が長い」です。なので、ぼくら医者も待ち時間を減らすよう、最大限の努力をしなければなりません。
その方法はたくさんありますが、一番効果的なのは、「無駄な検査を減らす」です。
とにかく病院は無駄な検査が多すぎ。まあ、病院の収益といったドロドロした話は今日は割愛しますが、それを差し引いても多すぎ。
「本当に必要な検査」に限定すれば、今の半分かそれ以下で大丈夫なはずですが、「検査があるから、検査する」のトートロジーに陥っている医者があまりにも多い。あと、問診と診察だけで診断できる病気も割と多いですが(全部じゃありません)、その能力が低い医者もあまりにも多い。そういう訓練、受けていないですから。しかも、そういう能力を欠いた医者ほど、忙しい大病院に勤務しているという皮肉も問題をさらに面倒くさくしています。
日本の待ち時間問題は複雑で、ひとつやふたつの方法で全部解決、というシンプルな話ではありません。でも、できるところから始めていく必要はあります。この問題、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
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