HIV陽性はどのような症状をきっかけに発見されるのであろうか。2003〜2004年の2年間でACCを受診した初診患者を対象として、HIV感染症の診断契機について。保健所などで自発的検査によってHIV感染症が診断された:33%、献血:2.3%、術前•入院スクリーニング:18%、疾患精査中:46%となっている。(※1)この研究では具体的な症状が不明であったため、もう一つ研究を参考とした。
2001年1月から2005年8月までに長野県内のエイズ治療拠点病院を受診したHIV感染症・AIDS新患134例のうち、解析可能な症例は125例を診断の契機をもとに解析すると以下の結果となった。(※2)
診断契機 |
件数(比率) |
ニューモシスチス肺炎 |
37(29.6%) |
口腔カンジダ症•原因不明の体重減少 |
各15(12%) |
パートナーがHIV |
14(11.2%) |
術前検査 |
11(8.8%) |
妊婦検査 |
8(6.4%) |
サイトメガロウィルス感染症 |
7(5.6%) |
検査希望 |
6(4.8%) |
トキソプラズマ脳症•皮膚疾患 |
各5(4%) |
梅毒•悪性リンパ腫•急性期症状 |
各4(3.2%) |
帯状疱疹•結核 |
各3(2.4%) |
食道カンジダ症•アメーバ大腸炎•進行性白質脳症•HIV脳症•不明熱•膠質反応高値 |
各2(1.6%) |
特に急性HIV感染症(PHI)について。1997年から2007年にかけて、東京のAids Clinical Center(ACC)とNational Center for Global Health and Medicine(NGCM)でPHIと診断された108名の患者に対して行われた研究を参考にした。20%以上にみられた症状は以下の通りである。(※3)
発熱 |
91% |
リンパ節主張 |
63% |
咽頭炎 |
53% |
皮しん |
50% |
下痢 |
37% |
疲労感 |
32% |
頭痛 |
26% |
筋肉痛 |
20% |
現在のHIV感染症は多くがAIDS発症後に診断されている。しかし、AIDS発症後は重症肺炎や悪性疾患により救命できないことがあるため、早期診断が重要であると考えた。そのためには①急性HIV感染症時に診断②無症候期の診断が重要である。①に関しては上記のような症状がsexually activeな患者にみられたら、HIVを鑑別の一つとして考え、性生活についてなどをきちんと問診することが大切である。また、②に関しては、今回の論文などでは深く触れられていなかったが、HBVやHCVを含むSTDを発見したら必ずHIVの検査を行うということ、またリスクの高い同性愛好者(特に男性)には定期的に検査を受診してもらうことが鍵となると考えられる。
(参照文献)
※1 厚生労働省 エイズ動向委員会 平成24年度エイズ発生動向年報
※2 信州医学雑誌 54(4):183-187(2006))
※3 Intern Med 50: 95-101, 2011 Clinical Symptoms and Courses of Primary HIV-1 Infection in Recent Years Japan
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