注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
酒さについて
【疫学、症状】
主に顔面中央に発症する炎症性病変で、肌の白い人(特に北欧出身の白色人種)に最も良く見られるが、黒人にも見られる。30~60歳によく発症し、女性に多く、男性には少ないが発症すると重症なことが多い。まれにではあるが、小児にもみられる。小児においては、腫瘤型以外を起こしやすく、症状は成人まで持続することが多い。治療をしなければ、どんどん悪化していく病気である。症状は顔面中央の紅斑、潮紅が主であるが、丘疹、膿疱が持続的な潮紅に加わることもある。また熱い食べ物や辛い食べ物の摂取、飲酒、熱、日光、ストレスなどの感情刺激により顔面の強い潮紅が見られることがある。
【分類】
4つのサブタイプに分けられるが、このうちのいくつかにあてはまる場合もある。
・血管拡張紅斑型:持続性の顔面紅斑や再発性の顔面潮紅がみられる。
・丘疹膿胞型:主に顔の中心に丘疹と膿胞がみられる。
・腫瘤型:組織肥厚により、不整に皮膚が厚くなる。鼻におこる事が多い。
・眼性型:皮膚の疾患の有無に関わらず、眼瞼や眼球の前方に結膜充血、角膜炎などの症状がみられる。
【診断】
酒さは上記にあげたような症状が特徴的であり、身体所見で診断することが多い。皮膚生検に関しては、例えば血管拡張紅斑型では血管拡張や末梢組織への炎症細胞の浸潤が見られ、腫瘤型では皮脂腺の増殖やムチンの増加が見られることが特徴的である。しかし、これらの所見は非特異的であるため皮膚生検が行われることは少ないが、身体所見において鑑別にあがった他の病理組織学的特異性のある疾患を除外するために皮膚生検を行うことはある。
身体所見上の鑑別疾患としては、血管拡張紅斑型は、日焼けや脂漏性皮膚炎、皮膚筋炎、急性皮膚エリテマトーデスなどがあげられ、腫瘤型ではニキビや局所ステロイド使用によるざ瘡様発疹、口囲皮膚炎などがあげられる。いずれも問診や身体診察、場合によっては皮膚生検により鑑別が可能である。
【治療】
・血管拡張紅斑型:軽症の場合、日焼け対策などを行い、これらで十分に効果がでなかった場合にレーザー、intense pulsed light、メトロニダゾール、アゼライン酸、ブリモニジン酒石酸塩などで治療する。
・丘疹膿胞型:軽度から中等度の場合、メトロニダゾール、アゼライン酸、スルファセタミドイオン化合物などで治療する。多数の炎症性病変を持つ場合や、局所薬で十分な効果が得られない場合はテトラサイクリン系の抗生物質の経口投与が行われる。これでも効果のでなかった場合はイソトレチノインを使用する。
・腫瘤型:まずはイソトレチノインを使用し、さらに悪化するようであればレーザーアブレーションや外科的切除も考慮する。
・眼性型:まずは非ステロイド性抗炎症薬やステロイドの目薬での治療を行い、それでも治らない場合は、経口ステロイドやテトラサイクリン系抗生物質の投与を行う。
【参考文献】
Up To Date; Rosacea: Pathogenesis, clinical features, and diagnosis;7 19, 2012
Up To Date; Management of rosacea ;1 19, 2012.
Up To Date; Ocular rosacea ;3 27, 2012.
Up To Date; Patient information: Rosacea (The Basics) ;8 24, 2011
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