第86回日本整形外科学会総会で講演することになった。学会長の越智光夫先生は元島根医科大学教授で、学生時代に薫陶を受けた。お断りできるわけもない。
http://www.joa2013.jp/
来年5月の学会なのだが、すでに抄録提出の締め切りを過ぎており、催促を受けて慌てて書いた。ぼくは抄録を書くのが大嫌いなのでついつい後回しになってしまったのだ。来年しゃべることなんて今分かるはずもないし、喋る内容を先に示すというのは(いつも思うけれども)理にかなっていない。
というわけで、「予告編」としての抄録を書くことにした。予告編とは、あらすじをベラベラしゃべるものではないからだ。いろいろ考える所あり、いかに転載する。
整形外科医のための感染症診療のピットフォール
外科系感染症の中でも心血管系と並んで診断治療に苦慮するのが骨関節系の感染症です。整形外科医の先生はその難しさをよく認識しておいでで、感染症に対して非常に細やかに対峙されます。
さて、近年の医学の進歩は目覚しいばかりです。得られる知見は量的に、領域的に拡大しています。整形外科領域も細分化が進み、膝、脊椎、股関節、手といったトポロジーによる細分化が進みました。
同様に、いわゆる「横断的」領域の専門性も高まっています。例えば、「がん」においては手術は外科医、化学療法は腫瘍内科医、放射線治療は放射線科医と専門性を活かしたチーム医療が必須となっています。同時に、人工呼吸器管理、栄養管理、疼痛緩和などのいわゆる「周辺領域」にも高い専門性が必要です。私のような「素人」にはもはや最適な栄養管理を自分一人で行うのは不可能です。
さて、私の守備範囲は感染症です。感染症が皆無という科は存在しませんから、どの領域にも顔を出します。外科系の感染症もよく見ます。いや、むしろ受けるコンサルトの半数以上は実は外科医からです。
我々の術後感染症に関する知識や経験値は、自分で申すのも何ですが、なかなかのものです。これは、当然のことです。我々は術後トラブルのあった症例ばかりを集約的にみるトラブル・シューターで術後感染症は「日常」です。一方、外科の先生にとって術後感染症は「例外事項」です。したがって私達の術後感染症の経験値は、ほとんどの外科医の先生を上回るものです(そうであるべきです)。
感染症診療には陥りがちな陥穽、ピットフォールがあります。そして、それには一定の「パターン」があります。構造的にビルドインされた定型的なピットフォールなのです。術中予防抗菌薬の選択然り、難治性感染症のマネジメント然り。これを共有し、よりよい感染症診療を模索するのが、本講演の目的です。どうぞよろしくお願い申しあげます。
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