注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだけ寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jpまで
病原体となるリステリア(Listeria monocytogenes)は、河川、土壌、植物など自然界に広く分布し、人畜共通感染を起こす。人におけるリステリア感染は汚染食品摂取が主要な経路である。一般の人々の2-10%の人々が無症候で保菌者となっている。健康保菌者もおり、通常は汚染食物を食べても重篤な症状をきたすことは少ないが、慢性疾患患者(悪性腫瘍、糖尿病、AIDS等)、妊婦、胎児または新生児、高齢者および免疫抑制薬投与患者では敗血症、髄膜炎などを起こし、致死率は20〜30%と高い。[1]
リステリアに対して加熱殺菌は有効であるが、低温では増殖能を持つ。このことは食品衛生上、最も注目すべき特徴であり、冷蔵庫中の温度(摂氏4-10度)でも活発に増殖することが確認されている。そのため食品の低温保存・流通を食品衛生の柱にしている先進国においても問題となっている。その他、耐酸性や耐塩性も知られており、10%食塩水中においても増殖することが確認されている。[2]
<感染媒体となる食物>[3]
コールスローサラダ 1981年カナダにて、リステリア症に感染した羊の糞便が肥料として利用されキャベツを汚染。食品媒介リステリア症が初めて証明された。この事例では感染者41名のうち18名が死亡。 |
生チーズ 1985年アメリカ(122人中31名死亡)、1983-87年スイス(142人中48名死亡)、その他多くの欧米諸国で感染が報告された。日本でも2001年、北海道の根室で国内生産された生チーズを食べて感染者がでた。 |
生ハム 2000年夏に日本において輸入製品から菌検出。 |
その他、未殺菌乳、ホットドッグ(生肉の加熱処理不全)、生野菜、生肉、魚介類、スモークサーモン(長期保存が原因)、メロン(冷蔵庫での長期保存)など、生ものや加工品問わず、多くの食物からリステリア感染が報告されている。 |
参考文献
[1]FAO、Food and Nutrition Paper No. 71、No.72 [2]Bille J. Listeria and Erysipelothrix. In: Manual of Clinical Microbiology, 9th ed, ASM Press, Washington, DC 2007. p.474 [3]厚生労働省;http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000136n1-att/2r985200000138nb.pdf
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