腎機能低下は一律に判断するのではなく、個別に判断します。間質性腎炎はアレルギー。したがって、大量投与の抗菌薬が問題ではなく、抗菌薬のアレルギーが問題なのです。
間質性腎炎
急性間質性腎炎(AIN)は薬物や感染に対するアレルギー反応によって起こる腎実質の炎症である。
病因
薬物…71%(βラクタム系抗菌薬は原因薬物として最も高頻度に見られる。ほかの薬剤としてはプロトンポンプ阻害薬、アロプリノールなどがある。NSAIDはネフローゼ域の蛋白尿を伴う急性間質性腎炎を起こすことがある。)
感染…15%(レンサ球菌、レプトスピラ症、レジオネラなど)
尿細管間質性腎炎とぶどう膜炎(TINU症候群) …5%
サルコイドーシス…1%
特発性…8%
症状・所見
初回曝露の場合、薬物に曝露してから腎障害が認められるようになるまで数週間かかることが多い。一方で二度目の曝露では3~5日で腎障害がみられはじめる。
非特異的症状としては吐き気、嘔吐、不快感などが見られ、アレルギー反応として皮疹、発熱、好酸球増加が見られる。三大徴候といわれている発熱、発疹、好酸球増加はAINを強く示唆する所見だが、10%の患者にしか3つの所見すべてがみられない。
その他尿沈渣にて白血球、赤血球、白血球円柱がみられ(糸球体腎炎でみられる赤血球円柱はほとんど見られない)、尿中好酸球増加、急激な血中クレアチニン濃度の上昇が認められる。
診断
急激な腎機能の悪化を認めた場合まずは腎前性、腎性、腎後性を鑑別する。尿量、エコーなどで腎後性、循環状態を確認して腎前性を除外する。腎性のものでは尿細管上皮の障害によるもの、糸球体の障害によるものなどを鑑別する。上記の薬の服用歴や尿沈渣所見、ラボデータがみられたら急性間質性腎炎を疑う。
確定診断は腎生検で行う。好酸球尿症は急性間質性腎炎を示唆する重要な所見ではあるが、これのみに重点を置くのはよくない。(好酸球尿症の感度は67%、特異度は87%という研究データがある。好酸球尿症は前立腺炎、膀胱炎、アテローム塞栓性腎疾患、急速進行性糸球体腎炎などでもみられる)
しかしほとんどの場合では、最初腎生検は行わずに、原因と思われる薬剤を中止して様子を見る。腎生検は診断がはっきりとわからない時、腎不全が進行した時、もしくは薬の中止によっても腎機能が回復しない時に行われる。
治療
治療の原則は原因薬物の中止である。ほとんどの場合腎機能は3~7日で自然に回復する。重篤な場合は一時的に透析が必要となることがある。薬物の中止で腎機能が回復しない場合は、腎生検を行ってグルココルチコイドを投与することが推奨されている(UpToDateにてグレード1C )、その有効性については結論が出ていない。プレドニンを少なくとも1~2週間1m g/kg/day投与し、血清クレアチニンが平常のレベルに戻ったら漸減していき、全て合わせて2~3ヶ月投与するという方法がある。
UpToDate 2012 Campbell-Walsh Urology 第9版
はじめてコメントさせて頂きます.
はじめまして岩田先生.
Lastwillと申します.腎臓内科医で岩田先生のファンです.
匿名に近いアカウントからの投稿でごめんなさい.
このポストは学生レポートとのなので,厳しいこと言うつもりは無いのですが,
急性間質性腎炎に対するステロイドは早めの方が良いと思います.
2010年のKidney Internationalのreviewでは診断から7日以内とあります.
安易にステロイドを使いたがる腎臓内科医はお嫌いかも知れませんが,
もっともっと早くコンサルトしてほしかったと思うことが多いです.
やはりステロイドが適切に使えると,回復後の腎機能が,Cr1mg/dl台と2〜3mg/dlくらい違います.(私見)
早めのステロイドのところ,強調したいです.
Identification and removal of the offending drug
are the mainstay of the treatment, but recent studies strongly
suggest that early steroid administration (within 7 days after
diagnosis) improves the recovery of renal function,
decreasing the risk of chronic renal impairment.
Acute interstitial nephritisから引用
Kidney International (2010) 77, 956–961
投稿情報: Lastwill22 | 2012/05/08 07:05