これも見逃しが多い前立腺炎。治療も思い込みがわりと多いです。
急性前立腺炎
疫学
急性細菌性前立腺炎は、前立腺炎のうち、10%を占める。多くは腸内細菌群の大腸菌が原因となるが、性交渉が活発な場合には淋菌やクラミジアも考える。自然に起こる場合は一般に若年男性に起こり、高齢男性では尿道留置カテーテルや間欠的な導尿に伴うことがある。抗菌薬の出現以降、急性細菌性前立腺炎の頻度は著しく低下した。
臨床症状
急性前立腺炎は発熱、寒気、尿混濁、頻尿、頻回尿意、排尿時不快感、前立腺腫大による閉鎖症状、肛門周囲の不快感、下部腰痛、会陰の痛みなどの症状を持つ。膀胱炎との違いは、多くの場合高熱を呈することだが、急性の単発の膀胱炎は男性には普通起こらず、男性では全ての下部尿路感染症は前立腺炎を疑うべきだ。
患者の中には急性感染症から、膿瘍形成、精巣上体炎、精嚢炎、敗血症、慢性細菌性前立腺炎になるものもいる。
診断
直腸診で浮腫状の圧痛のある前立腺は、急性前立腺炎を疑うべきだ。直腸診は優しく行うべきで、力強い前立腺マッサージは痛みを伴い、診断的、治療的価値も無く敗血症のリスクを増やすだけなので避けるべきである。尿のグラム染色と培養は急性前立腺炎を疑う全ての男性で行う。血液は培養を行い、白血球数の上昇も確認するべきだ。
経直腸超音波検査では、前立腺炎診断の七つの所見があるが、それらのうち二つは特異度が、40.7、51.9%、残り五つは感度が30.8から62.3%と低く、確かな診断ができない。
治療
ST合剤、キノロンは脂溶性・塩基性であり、前立腺への移行が良い。炎症が高度な場合は血液・前立腺関門が破壊されているため、どんな薬剤でも前立腺に到達でき、起炎菌をカバーしている抗菌薬なら使える。
グラム染色で細菌が見つかれば、抗菌薬による初期治療を決められる。初期治療で解熱して感染が落ち着いた後は、非経口投与の場合は経口投与に切り替え、初期治療開始から数えて2~4週間続ける。感染の根治を確かにするには4~6週間投薬する必要がある。ただし、重症でない症例では、10日のフルオロキノロン経口投与で良いとする意見もある。
しかし、これらのデータは専門家の合意やガイドラインから引用されており、大規模な臨床試験のデータに基づくものではない。明確なエビデンスに基づく急性前立腺炎の投薬期間のデータは見つからず、急性前立腺炎の投薬期間に絶対的な基準は無いと考えた。
参考文献
①レジデントのための感染症診療マニュアル第二版②感染症999の謎③UPTODATE:Acute and chronic bacterial prostatitis(Version 7.0、2012 4/23閲覧)④19.Wagenlehner FM, Weidner W, Naber KG. Therapy for prostatitis, with emphasis on bacterial prostatitis. Expert Opin Pharmacother 2007; 8:1667.⑤Puig J, Darnell A, Bermudez P, et al. Transrectal ultrasound-guided prostate biopsy: is antibiotic prophylaxis necessary? Eur Radiol 2006 Apr;16(4):939-43.⑥Grabe M. Perioperative antibiotic prophylaxis in urology. Curr Opin Urol 2001 Jan;11(1):81-5.⑦Classen DC, Evans RS, Pestotnik SL, et al. The timing of prophylactic administration of antibiotics and the risk of surgical-wound infection. N Engl J Med 1992 Jan;326(5):281-6.⑧EAUガイドライン
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