知らなきゃ見逃す、知ってても見逃してしまう副腎不全、、、
副腎不全
副腎皮質の機能低下により副腎皮質ホルモンの分泌低下または相互的作用不足により様々な臨床症状をきたす病態。
1原因
慢性副腎不全は、原発性と続発性にわけられる。原発性は両側副腎自体の病変により副腎皮質ホルモン分泌が低下する病態で、自己免疫性、特発性、感染(結核、髄膜炎菌によるwaterhouse-friderichsen症候群など)、出血性副腎梗塞などがある。続発性は副腎皮質ホルモンを調節する視床下部・下垂体の疾患(下垂体腺種や頭蓋咽頭腫など)や外因性のステロイドなどが原因として考えられる。
2臨床症状
経過により慢性と急性に分類される。慢性副腎不全では原発性と続発性とで症状の多くは同じで、起立性低血圧(90%)・易疲労感(99%)・食欲不振(99%)・悪心(86%)などのコルチゾール欠乏症状がみられる。また、続発性ではアルドステロンの分泌は維持されておりアルドステロン欠乏症状(低Na血症、高K血症など)は顕著ではない〔3〕が下垂体機能低下症などの他の症状がみられる。慢性の原発性副腎不全(アジソン病)ではアルドステロン欠乏による著名な起立性低血圧・高K血症と血中ACTH上昇による色素沈着がみられることがある。
急性副腎不全(副腎クリーゼ)では急性循環不全による突然のショックがみられる。発熱、悪心、嘔気、腹痛などの症状も見られるが非特異的な症状であり、敗血症との鑑別を要する場合がある。
3診断・検査
原発性と続発性の鑑別は通常明らかで、高K血症、色素沈着、他の自己免疫性内分泌疾患があれば原発性である。一方、他の下垂体ホルモンの欠乏、下垂体腫瘍の症状(頭痛、視野欠損など)、あるいはすでに下垂体疾患や視床下部疾患があれば続発性が考えられる。症状より副腎不全を疑うが原発性か続発性かはっきりしない場合、血液検査(好酸球・ACTH・電解質など)、早朝血清コルチゾール測定、ACTH負荷試験などにより原発性or続発性を検査する〔2〕。さらに画像所見などの検査により基礎疾患を調べる。
4治療
急性副腎不全が疑われた場合にはデキサメタゾン10mg静注による補液療法を行う。デキサメタゾンはコルチゾールに影響しないため、その後病態が落ち着いてからの内分泌検査が可能となり確定診断を行うことができる。診断が確定すれば鉱質コルチコイドを含むヒドロコルチゾンで補充療法を継続する〔5〕。
慢性副腎不全においては、デキサメタゾンかプレドニゾロンによるグルココルチコイド補充療法が必要。さらにフルドロコルチゾンによるミネラルコルチコイド補充療法が必要となる〔4〕。緊急時や予防時のために患者指導も行う。
血清コルチゾール測定
↓(血清コルチゾール<18μg/dl)
血漿ACTH濃度、迅速ACTH負荷試験によるアルドステロン濃度測定
↓ ↓
ACTH上昇、アルドステロン<50/ml ACTH低下or正常、アルドステロン≧50/ml
↓ ↓
原発性副腎不全 続発性副腎不全
〔1〕Harrison's Principles of Internal Medicine 18ed P2954-2960
Up to date : 〔2〕Diagnosis of adrenal insufficiency in adults , 〔3〕Clinical manifestations of adrenal insufficiency in adults
〔4〕Treatment of adrenal insufficiency in adults 〔5〕The Washington Manual 13ed P735-738
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