意外な組み合わせですが、結構重要です。
アトピー性皮膚炎と感染症
アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis : AD)とは再発を繰り返す皮膚の炎症が主症状であり、湿疹、そう痒などが現れる疾患である。通常健康な人の皮膚には角質層があり、皮膚からの感染を防ぐ様々なタンパク質が存在している。しかしAD患者の皮膚では、この角質層と防御因子として働くタンパク質が欠如している。このことが感染症に対する問題点である。
理由としては角質層が欠如していると、保水力が低下し皮膚が乾燥してしまう。乾燥が進むとかゆみが増し、そこを掻きむしることでさらに角質層が失われてしまい、炎症が広がってしまう。また通常、皮膚の正常細菌層には表皮ブドウ球菌が多く存在しているが、皮膚に防御因子を担うタンパク質が存在しないことで、黄色ブドウ球菌が優位になってしまっている。本来黄色ブドウ球菌は健康な人の常在細菌層の5%程に存在しているが、AD患者では、約90%の人に黄色ブドウ球菌が存在している。また黄色ブドウ球菌ほどではないが、AD患者の10〜20%で単純ヘルペスウイルスの感染も見られるので注意が必要である。マラセチアという真菌も感染することがあり、この真菌は頭、首、肘といった場所において四肢と体感よりも7〜10倍の菌が発見される。このように、ADのような基礎疾患が原因となって起きる感染症のことを二次感染という。
黄色ブドウ球菌がAD患者の皮膚に付着すると、Th2細胞が活性化しIL-4,IL-5,IL-13といったサイトカインが放出される。このサイトカインは血清中のIgE濃度を上昇させ、アレルギー性に皮膚の炎症を促進させてしまう。このようにアレルギー反応が進行することでADが悪化し、黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスウイルスによる皮膚感染も進行してしまうのである。
AD患者は黄色ブドウ球菌の菌血症になり感染性心内膜炎を発症するリスクが高く、AD患者が黄色ブドウ球菌の菌血症による感染性心内膜炎になったケースレポートは存在している。しかし、皮膚から血管内に黄色ブドウ球菌の感染が広がる機序についての記載は発見できなかった。
参考文献
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The Infection Aspect of Atopic Dermatitis (Immunol Allergy Clin Am 2010)
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Role of Bacterial Pathogens in Atopic Dermatitis (Clinic Rev Immunol 2007)
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Recurrent Prosthetic Valve Endocarditis Caused by Staphylococcus aureus Colonizing Skin Lesions in Severe Atopic Dermatitis (The Japanese Society of Internal Medicine 2007)
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Atopic dermatitis: a disease of altered skin barrier and immune dysregulation (Immunological Reviews 2011)
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Infective endocarditis caused by Staphylococcus aureus in a patient with atopic dermatitis: a case report (Journal of Medical Case Reports 2008)
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