これももう何度かやったはずだけど、繰り返しは大事です。
肺炎随伴性胸水
●病態
肺炎に伴う胸水を肺炎随伴性胸水と呼ぶ。肺炎随伴性胸水は、肺胞領域の感染によって貯留した肺間質液が炎症性サイトカインの作用により臓側胸膜を越えて胸腔に貯留するものである。その大部分では胸水自体に感染はないが、10%(1)は細菌感染を起こし胸水は膿性となる。膿性胸水には凝固能の亢進とフィブリン溶解能の低下が見られ、フィブリンの析出に伴い胸水貯留部位の被包化や繊維化を起こす。この状態が持続すると胸膜は肥厚し、肺組織との癒着が起こり、肺・胸郭の運動制限を来たす。
起炎菌としてグラム陽性菌では、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌が多く、グラム陰性菌では緑膿菌や大腸菌、クレブシエラの頻度が高い。また口腔内常在菌としてStreptococcus milleri group の検出も多い。
●胸水の評価
胸腔穿刺によって採集した胸水をLightの基準で漏出性と滲出性の鑑別を行うと、肺炎随伴性胸水は滲出性である。
画像診断には超音波とCTが有用である。胸水の貯留量や貯留部位、被包化や胸膜肥厚の程度を診断できる。特に超音波で被包化が進むと、体位変換をしても胸水部位の移動が見られなくなる。グラム染色と培養の陽性は感染を疑う所見となる(ただし感度は50%程度)。胸水中のpH値(<7.2)やグルコース値(<60mg/dl)の減少はドレナージ適用となる。(3)
●治療
まず原因菌が同定されるまでは、広域スペクトラムを持つ抗菌薬でエンピリカル治療を行う。菌が同定されたら、スペクトラムの狭い抗菌薬に変更する(De-escalation)。酸性の膿瘍内ではアミノグリコシドは活性が低下する。ドレナージの適応と条件は下記の表参考。(ACCPガイドライン、(4))ドレナージや抗菌薬が有効でない場合は、腹腔鏡下手術(VATS)によるdebridementが挙げられる。
カテゴリー |
胸水量 |
胸水の細菌検査 |
胸水pH |
ドレナージ |
1 |
10mm未満 |
グラム染色・培養陰性 |
不明 |
不適用 |
2 |
10mm以上、片側胸郭の1/2未満 |
グラム染色・培養陰性 |
7.2以上 |
不適用 |
3 |
片側胸郭の1/2以上 |
グラム染色・培養陽性 |
7.2未満 |
適用 |
4 |
被包化胸水、胸膜肥厚 |
膿汁 |
7.2未満 |
適用 |
参考文献 (1)呼吸器疾患vol.5
(2)ハリソン内科学 第3版
(3)レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版
(4)UpToDate Parapneumonic effusion and empyema in adults
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。