ぼくが4年生の時、最初のCPCで受け持ったケースも主訴が「嗄声」でした。この漢字をさせいと読むと初めて知りました。どこが障害を受けると声がかすれるのか、まとめときましょう。
感染症レポート 「嗄声について」
声は肺から流れ出る「呼気」によって声帯が振動することで生じる複合音である。
嗄声とは総合的な声の異常であり、声帯の振動が乱れた状態ともいえる。嗄声を来す鑑別診断は、下図に示す。声帯の器質的病変や運動麻痺が主体だが、機能的な障害も考えられる。嗄声の病態生理としては、音声の高さ、大きさ、長さ、音色の4つの要素での障害が考えられる。具体的には、擦れた声・呼気のもれるような声・震えた声・聞き取れないような小さな声などがある。嗄声の評価として、声の聴覚的印象、音声の最大持続時間の測定、音響分析や発声機能検査など、特殊な装置を用いて行う検査がある。
嗄声の治療として、主に急性の嗄声に対する保存的治療と、慢性の嗄声に対する外科的治療が挙げられる。
保存的治療として、第一に声の安静、適切な発声方法、禁煙、生活習慣の改善などの「声の衛生」がある。これは特に声の酷使による音声障害に対して行われる。次に、急性(慢性)喉頭炎が原因の嗄声に対し、消炎薬や局所吸入治療などの「薬物治療」がある。浮腫が高度な場合には、ステロイド薬の全身投与が行われることもある。また、機能的発声障害が原因の嗄声に対して、過緊張発声ではリラクゼーション法、声門閉鎖不全型の発声ではプッシング法などの「音声訓練による発声法の指導」で改善する場合もある。
外科的治療は、疾患別に治療法が異なる。声帯ポリープ・声帯結節・ポリープ様声帯・声帯嚢胞などの良性腫瘤性病変に対しては、顕微鏡下喉頭直達鏡手術での切除、局所麻酔下内視鏡手術が行われる。喉頭乳頭腫、喉頭白板症、喉頭癌などの腫瘍性病変は、早期発見・診断が重要であり、病理診断のために、内視鏡下もしくは喉頭微細手術での組織生検が行われ、治療においては嗄声の改善よりも病変の完全除去が優先となる。喉頭の内部の筋群を支配する反回神経の麻痺は、声帯の可動性障害と声帯の萎縮により、嗄声を引き起こす。回復不能例に対しては、声帯の位置を補正するために喉頭枠組み手術である甲状軟骨形成術1型や披裂軟骨内転術が行われる。痙攣性発声障害に対しては、ボツリヌス毒素を注入して喉頭内筋を麻痺させる方法が効果的だが、その効果は3~6カ月と一時的で、繰り返しの治療が必要になる。最近では、喉頭微細手術による内筋切除や甲状軟骨形成術なども試みられている。
声帯の萎縮性病変に対しては声帯内充填術が行われる。充填材料としてはコラーゲン、自家脂肪、自家筋膜などが用いられている。反回神経麻痺による声帯筋の萎縮には有効だが、声帯溝症などのように振動部にあたる粘膜下組織の欠損した病態では、音声の改善が難しい。 参考文献;primary care medicine p1393~1397 . ハリソン内科学 内科診断学
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