分かっていることと分からないことの分水嶺を、、、、見えにくいですね。
壊死性筋膜炎の治療
壊死性筋膜炎(NF)は壊死性の軟部組織感染症で、筋膜の壊死と筋膜に沿った急速な進行を特徴とする1)。近年の報告でも死亡率約20%の生命予後不良の感染症である2)。嫌気性菌と好気性菌との混合感染によるⅠ型は主に糖尿病や免疫不全をもつ患者にみられる。単一菌種、主としてA群β溶連菌(GAS)によるⅡ型はバックグラウンドに疾患を持たない人にも起こりうる。治療は早期の外科的切開・デブリドメントが主軸となり、適切な抗菌薬投与、毒素性/敗血症性ショックに対する全身管理が必要である。
〇外科的切開
外科的切開・デブリドメンとは壊死性筋膜炎の治療の中心である。手術までの時間が予後の規定因子になるとされるため、疑った段階でできるだけ早く外科的切開を行うべきである3)。壊死した組織は適切な断端を含め完全に取り除くことが重要である。術後にも一日一回は患部を注意深く観察し、壊死の拡大を認めた場合は繰り返しデブリドメントを行う。 必要な手術回数は退院までに平均3回との報告もある4)。
〇抗菌薬
壊死性筋膜炎では広域スペクトラムの抗菌薬によるエンピリックな治療を即時に行うことが望ましい。Ⅰ型では嫌気性菌と好気性菌の両方をカバーするためimipenem、meropenem、ertapenem、piperacillin/tazobactamやtigecyclineによる単剤療法や、多剤併用では高用量penicillin、高用量clindamycin、そしてグラム陰性菌のためfluoroquinoloneまたはaminoglycosideの3剤併用が用いられる5)。またMRSAの可能性が除外されるまではvancomycin、daptomycin、またはlinezolidも含めるべきである。Clindamycinのような蛋白合成阻害薬は毒素合成を阻害することで特にclostridiumやGASの感染の時は炎症反応を抑えるのに有効である可能性がある。後ろ向き研究でβ-lactamなどの壁合成阻害薬単独に比べclindamycinなどの蛋白合成阻害薬が用いられたほうが予後がよかったとする報告もある6)。
その他
全身管理はICUで慎重なモニター下で行うことが望ましい。手術や抗菌薬に加え循環管理、傷口のケア、栄養療法などの支持療法が不可欠である。壊死性筋膜炎ではGASの毒素によってショックが生じるため、大量の輸液と必要に応じて昇圧剤などICUにて循環動態の安定化が重要となる。栄養療法は入院当日から行われ、大きな傷口により失われた蛋白・体液を補うために重症外傷や熱傷時と同様のカロリーが必要といわれている7)。
また新たな方法としてclostridial toxinsやstreptococcal superantigensを中和する抗体のIVIGの投与や高圧酸素療法が予後を改善するとの報告もあるが今後さらなる研究が必要とされる5) 7)。
Reference
1) Dennis L Stevens, MD, PhD “Necrotizing infections of the skin and fascia”. UpToDate. Last updated 06/07/2011
2) Sunderland IR, Friedrich JB. “Predictors of mortality and limb loss in necrotizing soft tissue infections of the upper extremity.” J Hand Surg Am. 2009 Dec;34(10):1900-1.
3) McHenry CR, Piotrowski JJ, Petrinic D, Malangoni MA. Determinants of mortality for necrotizing soft-tissue infections. Ann Surg 221: 558-563, 1995
4) Sudarsky LA, Laschinger JC, Coppa GF, Spencer FC. Improved results from a standardized approach in treating patients with necrotizing fasciitis. Ann Surg 1987; 206:661.
5) Anaya DA, Dellinger EP. Necrotizing soft-tissue infection: diagnosis and management. Clin Infect Dis. 2007 Mar 1;44(5):705-10. Epub 2007 Jan 22.
6) Zimbelman J, Palmer A, Todd J. Improved outcome of clindamycin compared with beta-lactam antibiotic treatment for invasive Streptococcus pyogenes infection. Pediatr Infect Dis J 18: 1096,1999
7) Taro Shimizu, Yasuharu Tokuda “Necrotizing Fasciitis”. Intern Med. 2010;49(12):1051-7. Epub 2010 Jun 15.
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