これもよいですね。ときどき復習しておきましょう。
急性リウマチ熱
咽頭痛を伴うA群レンサ球菌の先行感染の約3週間後から発熱を伴い移動性の関節炎が見られれば、急性リウマチ熱を疑うべきである。この関節炎は、まず一つの大関節の著明な疼痛/発赤/腫脹/局所熱感に始まり、鎮痛薬がよく効き、その関節炎が軽快すると、突然に他の大関節に症状が認められ、はじめの関節は正常化し後遺症を残さないという特徴がある。急性リウマチ熱に伴う疾患はほぼすべて完全に回復するが、A群レンサ球菌の先行感染後、最長6ヶ月という長い潜伏期間を経て起こる心炎は後遺症を残しうるので注意が必要である。そのため、僧帽弁/大動脈弁の狭窄/逆流を見た際は、リウマチ性心疾患も鑑別にあげる必要がある。
【疫学】5~14歳の小児に発症し、男女差はなく、頻度はアメリカなどの先進国では10万人に2~14人とまれである。また、リウマチ性心疾患に至るのは女性のほうが2倍の頻度となる。
【診断】大症状(1・2症状)+小症状(2症状)+A群レンサ球菌の先行感染の所見
大症状 |
心炎、多発関節炎、舞踏病、輪状紅斑、皮下結節 |
小症状 |
発熱、多関節痛、ESR亢進、WBC増加、心エコーにてRR間隙延長 |
先行感染を示す所見 |
ASO上昇、他の連鎖球菌抗体上昇、咽頭スワブの培養陽性、迅速抗原検査陽性、 最近猩紅熱感染の所見あり |
・発熱;発熱は純粋な舞踏病を除くほとんどの例に見られ、39℃以上がほとんど。
・多関節炎(60~70%);移動性の非対称性大関節炎が起こり、熱感・腫脹・発赤・疼痛の強いものと弱いものがある。サリチル酸類やNSAIDSによく反応する。
・舞踏病(2~30%);特に頭部(舌をさらっと動かす運動)や上肢に出現する。重症例では自傷の危険性もあるが、通常6週間以内に完全に無くなる。
・心炎(50~60%):僧帽弁はほとんどの場合障害されるが、大動脈弁も共に障害されることがある。初期の弁障害では血液の逆流を引き起こすが、その後何年もかけて弁尖肥厚・瘢痕化・石灰化・弁狭窄へと進展する。心膜炎・心筋炎を来すこともある。
・皮膚症状(2%);輪状紅斑が典型的であり、中心部が鮮明なピンク色の斑として始まり、蛇行性・拡大性の辺縁を残す。通常は体幹に、時に四肢に現れる。
【鑑別診断】レンサ球菌感染後反応性関節炎との鑑別が問題となる。鑑別点は、対称性の小関節炎が多いこと。関節炎にサリチル酸類やNSAIDSが効かないこと。潜伏期間が通常1週間と短いこと。心炎などの随伴反症状がないこと。A群以外のβ溶血レンサ球菌の感染を誘因とすることもある。
【治療】心炎の疑いのあるものには全例心エコーを施行すべきである。
・penicillin 500㎎を1日2回10日経口投与・120万単位のpenicillin G benzathine筋注
・関節炎、発熱に対し、aspirin 80~100mg/kg/day(数日から最長2週間)
・重症心筋炎に対しprednisolone 1~2mg/kg/day(有用性は証明されていない)
・重症舞踏病に対し、bamzepine・sodium valproate(症状減弱に過ぎず期間・予後は不変)
・治療抵抗性の舞踏病に対し、IVIg
【一次予防】レンサ球菌感染症の主要な危険因子、特に過密な住宅の解消と不衛生な社会基盤の整備を必要とするが、現実的にはA群レンサ球菌による咽頭痛に対する抗菌薬投与を適切に行うことである。
【二次予防】急性リウマチ熱の患者では、A群レンサ球菌感染後再発する危険性が高いので、再発予防のため120万単位のpenicillin G benzathine筋注を2から4週間間隔で投与する。
【参考文献】ハリソン内科学第3版 2162-2166/福井次矢 (著, 監修), 黒川清 (監修)
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戸田新細菌学第33版/吉田 眞一 編/柳 雄介 編/吉開 泰信 編
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