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痒みを訴えている患者へのアプローチ
◆痒みを引き起こす代表的な疾患
皮膚疾患 湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、虫刺され(痒疹)、蕁麻疹、白癬、乾癬、接触皮膚炎、水疱症、薬疹、など
⇒乾燥では、皮膚のバリア機能が低下し、外的刺激により痒みを引き起こしやすくなる。湿疹や皮膚炎では、刺激されたC線維神経末端からSPが放出され、肥満細胞からヒスタミンが放出され、痒みを引き起こす。
内臓・血液疾患 慢性腎不全(透析患者の80%)、肝硬変、胆汁うっ滞、肝炎(黄疸のある患者の20%)、糖尿病、多血症、悪性リンパ腫、白血病、鉄欠乏性貧血、寄生虫症、など
⇒ヒスタミン、SP、ブラジキニン、セロトニン、胆汁酸、オピオイド、無機物質(Ca,Al,Mg)の沈着により痒みが引き起こされる。
その他 悪性腫瘍、甲状腺機能障害、神経疾患(多発性硬化症患者の30%)、妊娠、心因性
上記の疾患は代表的なものであり、痒みを引き起こす原因疾患は莫大な数にのぼる。そのため、問診・身体所見を詳細に取り、診断をより確実なものに近づける必要がある。
◆問診のポイント
痒みのある部位、期間(例指の間・手首・陰部⇒疥癬、肘の屈側・膝窩部⇒アトピー性皮膚炎、乾燥によるものは下腿に強い傾向がある、など)
増悪因子と寛解因子(例入浴後⇒真性赤血球多血症)、季節性変化(例冬期に発症または増悪⇒乾皮症、同様の症状を呈する人またはペットの有無)
その他病歴(糖尿病、慢性腎不全、肝障害などの慢性疾患)
薬剤歴(市販薬、漢方薬、ハーブ)
社会歴(職業歴、渡航歴、化学物質やアレルギー性/刺激性皮膚炎を惹起する物質への曝露)
家族歴(アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などのアトピー素因)、悪性腫瘍
月経歴(妊娠の有無)
◆身体所見のポイント
①頭部、眼、耳、鼻、咽喉:眼球結膜の黄染(肝疾患)、粘膜蒼白(アレルギー)
②肺:喘鳴の有無を聴診する。急速に出現していればアナフィラキシーの前兆である
③消化管:臓器の肥大、特に肝腫大の有無を触診する。
④リンパ節:腫大の鑑別診断には菌状息肉腫、リンパ腫、慢性刺激などがある
⑤精神状態:不安、薬物離脱症状の有無
⑥皮膚:皮膚描記症、膨疹、Auspitz(+)(乾癬)、Nikolsky(+)(落葉性天疱瘡)など
問診と身体所見で診断が明らかにならなかった場合、さらに皮膚擦過試験(真菌感染症)、血液検査、甲状腺機能検査、画像検査、尿検査、虫卵検査などを追加する。痒みといえど、皮膚自体に限らず内臓疾患が関連している可能性もあるため、悪性腫瘍などを見落とさないように注意すべきである。
<参考文献>
10分間診断マニュアル第2版 メディカルサイエンス・インターナショナル
症状から診る内科疾患 MEDICAL VIEW
標準皮膚科学第9版 医学書院
チャート内科診断学 中外医学社
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