なにか機会がないと勉強しない病気トップ3のひとつ。ちなみにググると全然違うサイトばかりです。
ブルセラ症
<定義・概念>
ブルセラ属菌による人獣共通感染症である。感染した動物(羊、牛、ヤギ、ブタ、など)の体液、低温殺菌されていない牛乳、チーズなどからヒトに伝播する。経口、経皮膚(傷から)、経結膜、経気道感染がある。波状熱の原因となり、また感染症法の四類感染症に指定されている。ブルセラ症は地中海地方、中南米を中心に世界中に分布している。更に研究室関連感染症の中で、ブルセラ症は約8%を占めている。
<病原体>
ブルセラ属菌は小型のグラム陰性球桿菌であり、粘膜内でマクロファージに貪食されるが、30%が細胞内で生存する。多様な菌種が存在し、B.melitensisは主に羊、ヤギ、ラクダから、B.abortusは通常、牛から、B.suisは豚から、B.canisは犬から感染する。なかでもB.melitensisは最も病原性が強く、患者数も多い。
<臨床像>
熱以外の特異的な症状に乏しく不明熱の原因になりうる。潜伏期間は1週間から数カ月に及ぶ。発熱が必発であり、多量の発汗が夜間にみられることが多い。他には無欲感、疲労感、食欲・体重の減少、筋肉痛、頭痛、悪寒、抑うつが出現する。ブルセラ症の発熱は典型例では波状熱を示し、数週間持続する。20~30%に骨関節症状がみられる(特に仙腸関節炎が多い)。男性の約10%に精巣上体炎・精巣炎が、症例の1~2%に神経性ブルセラ症、心内膜炎、および肝膿瘍が起こる。致死率は低いが、死亡の多くは心内膜炎が原因である。局所症状が出る人は診断までに30日以上時間がかかったケースで多く、局所症状が出る人は出ない人と比べて予後が悪い。
<診断>
問診にて暴露の可能性があるかを聞き出すことが重要である。診断には血液、脳脊髄液、骨髄、関節液、生検検体によるブルセラ属菌の培養が確実である(血液培養の感度は初感染で約80%、再発で約66%)。血清学的検査には試験管凝集反応法、ELISA法があり、抗体価が160倍以上の場合、もしくは、ペア血清での4倍以上の上昇がみられた場合に診断となる(ただし、B.canisの感染は試験管凝集反応法では明らかにならない)。
<治療>
治療としては、骨関節疾患、神経性ブルセラ症、心内膜炎がない場合にはドキシサイクリン100mg1日2回経口投与+リファンピシン(15 mg / kg)1日1回経口6週間で行う。骨関節疾患がある場合には、ドキシサイクリン100mg 1日2回経口投与を6週間+ストレプトマイシン1g筋注1日1回を14~21日行う。
<予防>
現在、ヒトに対してのワクチンはなく、動物へのワクチン接種によって予防が可能である。牛乳の低温殺菌も重要である。
<参考文献>
Harrison's Principles of Internal Medicine
Up to date: Microbiology, epidemiology, and pathogenesis of Brucella
Up to date: Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of brucellosis
Young EJ. An overview of human brucellosis. Clin Infect Dis 1995; 21:283.
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