いい感じでまとめてくれました。
カンジダ血症
【概要】カンジダは皮膚、消化器、泌尿器において常在的に存在する酵母様真菌であり、グラム陽性に染まる。
種としてはC.albicansが最多である。カンジダ血症の原因菌種としてもC.albicansは主であるが、1990年頃より抗真菌薬としてのフルコナゾールが治療薬だけでなく予防的投与としても用いられるようになり、フルコナゾールに対する耐性を持つC.albicans の増加や耐性を持つnon-albicansの台頭が問題となっている。
カンジダ血症はカテーテル関連の感染として4番目に多く、米国においては1995-2002において9%を占めた。強力な免疫抑制状態の患者と血管カテーテルの使用の増加により非常に増加している。その致死率は40%に及ぶ。
【リスク因子】リスク因子としてHickman cathetersの利用、胃酸抑制薬の使用、ICUの滞在、APACHE scoreが高値、鼻腔栄養チューブの使用、完全非経口栄養、広域スペクトラムの抗菌薬の使用、中心静脈栄養、急性腎不全(特に血液透析を必要とする場合)、術後(特に腹部)が挙げられる。
【臨床症状】微熱から重症細菌感染による敗血症症候群と判別困難なものまで様々。好中球減少症や臓器移植に伴う不明熱として表現されることも多い。
血流感染症として循環器系において人工弁・自然弁の心内膜炎がみられ、筋・骨格系として関節炎・骨髄炎、筋炎が、神経系においては髄膜炎がみられることもある。眼内炎がみられることもあり、皮膚症状が出現する場合もある。
【診断】Gold standerdは血液培養が陽性であることであり、疑いがあれば血液培養は全員に行うべきである。しかし血液培養は感度があまりよくなく(50%)、判定までの時間が長いという欠点もある。この欠点を補うために、検査前確立を高める補助診断の方法や経験的な治療開始が必要である。補助診断としては真菌の細胞壁を構成しているbeta-D-glucanを検出する方法、PCRを利用したカンジダの核酸を検出する方法(感度 95%、特異度92%)が挙げられる。さらに、検査前確率を高めるためには、上記リスク因子を理解し、high riskであるか否かの認識をもつことである。臨床症状が出ていない場合も疑うことが必要であり、リスクの評価を行い、認識し、疑って、検査を行い、治療を経験的開始することが重要となる。
【治療】血液培養にてカンジダが検出された場合には全例治療を行う。臨床的に疑われる場合、治療開始は経験的治療を行い、同定された菌種に応じて治療薬を変更する。カンジダはその種に応じて治療薬に対する感受性が異なる。
I: 中等度耐性 R: 耐性 S: 感受性 S-DD: 用量/移行性依存の感受性
|
FLCZ |
ITCZ |
VRCZ |
5-FC |
A MPH-B |
Echinocandine |
C.albicans |
S |
S |
S |
S |
S |
S |
C.tropicalis |
S |
S |
S |
S |
S |
S |
C.parapsilosis |
S |
S |
S |
S |
S |
S (toⅠ) |
C.lusitaniae |
S |
S |
S |
S |
S to R |
S |
C.krusei |
R |
S-DD or R |
S to I |
I to R |
S to I |
S |
C.glabrata |
S-DD or R |
S-DD or R |
S to I |
S |
S to I |
S |
*FLCZ: フルコナゾール ITCZ: イトラコナゾール VRCZ: ボリコナゾール 5-FC: フルシトシンA MPH-B: アムホテリシンB
治療において重要なことは、カンジダのリスクも高く状態が悪い患者においては、血液培養にて菌種の同定を待つのではなくEmpiricに治療を行うということである。菌種の同定ができない場合の治療としては、広域のカンジダに作用するエキノキャンディン系を選択し、検査結果に応じてその菌に対応する薬に変更していく。エキノキャンディン系は薬価が高いことや耐性菌の出現、点滴投与しなければならないことを考慮すると、変更することも重要である。治療期間としては血液培養による陰性化を確認して2週間である。
またカンジダの血流感染が判明した際には眼球に感染している可能性もある。血流感染において25-30%において眼病変がみられ放置すれば永久的な視力障害を残し患者のQOLの低下を招くので、眼底検査により確認することも必須である。治療期間は最低4〜6週とし眼底所見が完治、あるいは固定するまで行う。硝子体手術や抗真菌薬眼球内投与を行う場合もある。
カンジダによる感染は臨床の現場において増加しており、患者がもつリスクを把握し経験的な治療を行うことが重要。また眼は人間にとって重要な臓器であり、疑って確認することは医師として大切なことである。
【参考文献】Treatment of candidemia and invasive candidiasis in adults;2011 Up to date
Clinical manifestations and diagnosis of candidemia and invasive candidiasis in adults;2011 Up to date
Epidemiology and pathogenesis of candidemia in adults; 2011 Up to date
レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 医学書院 青木眞
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