これももう何度もやっているネタだけど、こういうのは繰り返す価値があると思ってます。
慢性疲労症候群について
《定義》慢性疲労症候群chronic fatigue syndrome(CFS)とは、消耗性の疲労とそれに関連した身体的・精神的な訴えを特徴とする疾患に対して近年になってつけられた疾患概念である。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は症状およびその他の疾患の除外に基づく診断基準を下記の表の通りに定めている。米国による疫学調査では、このCFSの定義を満たしている患者は、人口10万人あたり100~300人である。
1. 下記の症状にあてはまる 臨床的に評価される説明しがたい持続性または反復性の疲労のうち、新たに発症したものであるか発症時期がはっきりしているものであり、進行中の労作によるものではなく、安静によって軽減されず、発症前に比べて、職業上、学業上、社会生活上、私生活上の活動レベルを大幅に低下させるもの 2. 下記の症候のうち4つ以上が、疲労の発症から6ヶ月以上にわたって持続または反復している ・自己申告の短期記憶障害または集中力障害 ・咽喉痛 ・筋痛 ・頸部または腋窩リンパ節の圧痛 ・発赤や腫脹を伴わない多発関節痛 ・これまでにない分布または重症度の頭痛 ・熟睡感のない睡眠 ・労作後24時間以上続く倦怠感 |
《病因》EBV,CMVなど様々なウイルスが原因と研究がなされているが、証明はされていない。
《診断》CFSは一般にそれまで元気であった人に突然起こる。症状としては疲労はもちろんのこと筋痛や発熱、体重減少、頻脈など様々な症状を呈す。CFSには特異的な症状がなく、様々な症状の集積と除外診断に基づいて診断するしかない。よって他の疾患を除外するための、詳細な病歴聴取・身体診察および適切な臨床検査の利用が必要である。鑑別疾患としては、HIV・梅毒などの感染症、膠原病、甲状腺機能低下症、線維筋痛症、過敏性腸症候群、精神疾患などが挙げられ、TSHやHIV抗体・抗原などそれぞれの鑑別疾患に対する特異的な所見に対して精査しなければならない。
《治療》特異的な治療はなく、個々の症状に対して対症療法する。症状は治療に反応しごく少数だが完全に回復する事もあるが、多くは劇的な変化なく慢性に経過する。病気が進行することはまれである。具体的には頭痛や発熱にはNSAIDs、鼻炎・副鼻腔炎には抗ヒスタミン薬、抑うつ・不安には抗うつ薬などを処方する。
アシクロビル、免疫グロブリン静注は比較対象試験からは、CFSに効果がないとされている。
《実際に慢性疲労を訴える患者さんを診た時には》慢性疲労を呈する患者さんをやみくもにCFSと診断してはならない。慢性疲労を訴える患者さんのなかで CFSの基準を満たすものは10%以下である。また呼吸苦・筋力低下などによる疲労症状とは区別されなければならなく、なぜならばその中には心不全やCOPD、ギラン・バレー症候群など致命的な疾患が隠れているかもしれないからである。
そしてCFSの患者さんにおいては、病気の性格をよく説明し、その人にあった治療目標を設定しながら身体的・心理的・社会的な健康に対して総合的にアプローチしていく必要がある。
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