ほんと、難しい(わからない)ことが多いHBV。がんばってまとめました。
HBVの治療薬
B型肝炎に対する抗ウィルス療法について解説する。治療薬はインターフェロン(IFN)とヌクレオド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)の2種類がある。
【特徴】
|
投与経路 |
治療期間 |
耐性 |
副作用 |
インターフェロン |
皮下注射 |
~6カ月 |
報告されていない |
しばしば |
ヌクレオシド系 逆転写酵素阻害薬 |
経口 |
1年~ |
多い |
稀 |
IFNはホストの免疫機能を賦活し抗ウィルス作用を発現する。耐性は報告されていないが、副作用は多い。例えばインフルエンザ様症状(発熱、筋痛、頭痛、疲労など)(0.1~5%未満)、精神神経学的異常(0.1~5%未満)、血球減少症(0.1~5%未満)、網膜症(0.1~5%未満)、自己免疫疾患の増悪などがある。
NRTIはHBVの逆転写酵素を阻害してHBV-DNA複製を抑制し、副作用はあまり見られない。日本ではラミブジン,アデホビル,エンテカビルが保険承認されておりテノホビル,テルビブジンは海外では使えるが日本では未承認である。IFNが注射薬であるのに対し、これらは経口薬なので使いやすく、ペグインターフェロンよりもHBV-DNAの抑制効果、HBeのseroconversion率において優れている。
NRTI未治療例に対して、ラミブジン,アデホビル,エンテカビルの選択肢があるがエンテカビルが第一選択である。なぜならラミブジン、アデホビルの作用機序はチェーンタ―ミネーションだけであるが、エンテカビルの作用機序はチェーンタ―ミネーションに加えてプライミング阻害があり、1年,5年耐性出現率がラミブジン23%,80%,アデホビル0%,29%,エンテカビル0.2%,1.2%とエンテカビルが最も耐性出現率が低いからである。[1]ラミブジン耐性例に対して、アデホビル単剤治療の耐性出現率は1年で18%[2]であるが、ラミブジン+アデホビルの2剤併用の耐性出現率は3年で4%と低い[3]ので、ラミブジン+アデホビルの2剤併用が推奨される。
【HBV/HIV共感染の場合の治療方針】
HBVと HIVの感染経路は非常に似ておりHBV感染者に高率にHIVの共感染が認められる。HBV/HIV共感染者の治療においては特に注意が必要である。共感染では通常と比較してB型肝炎の病期進行が早まるとの報告があり、HBV/HIVに対する早期の治療介入が検討されることが多い。
B型肝炎治療に用いるNRTIはもともとHIVの治療薬として作られたものが多く、HBV感染は単剤治療を行うが、HIV感染は多剤併用治療が必要であるため、HBV感染のみに目を向けて単剤治療してしまうとHIVに耐性を獲得してしまう危険性がある。例えばHBVに対するエンテカビル単剤治療は、HIV治療としては量が少ないことと単剤であることから、HIVの184の変異を獲得する危険性が非常に高い。そしてエンテカビルだけでなく、ラミブジン、エムトリシタビンもHIV治療に使用できなくなる。よってHBV/HIV共感染の場合、HBVとHIV両方の治療を検討すべきである。具体的には、腎機能など問題なければテノホビルをkey drugにしてHAARTのレジュメが推奨されることが多い。
【考察】
エンテカビルはB型肝炎治療の第一選択薬であるが、エンテカビルを単独で用いるとHIV共感染が隠れていた場合HIVに耐性を獲得し、HIV感染の治療を困難にする。よってHBV感染の治療前にHIVスクリーニング検査をすることが大切である。
【参考文献】
Harrison's Principles of Internal Medicine P1957-1962
AASLD Practice Guidelines 2009 Chronic Hepatitis B
青木眞,レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版P301-310
南祐仁,岡上武、核酸誘導体によるB型慢性肝炎治療の現状と課題,肝臓2006;47巻11号:499-502
[1]Zoulim F,Locarnini S.Hepatitis B virus resistance to nucleos(t)ide analogues.Gastroenterology 2009;137(5):1593-1608
[2]Lee YS, Suh DJ, Lim YS, et al. Increased risk of adefovil resistance in patients with lamivudine-resistant chronic hepatitis B after 48 weeks of adefovir dipivoxil monotherapy. Hepatology 2006;43(6):1385-1391
[3] Lampertico P , Vigano M, Manenti E et al, Low resistance to adefovir combined with lamivudine:a3-year study of 145 lamivudineresistant hepatitis B patients. Gastroenterology 2007;133(5):1445-1451
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