日曜日に行われたEUらのリスクコミュニケーションの意見交換会でも盛んに主張されたが、日本では霞ヶ関と周辺の専門家の区分が明確でなく、誰がどのような専門性と責任でもって意見を述べているのかが判然としない。
このことは、2009年のパンデミックのときにもさんざん主張してきた(僕だけでなくいろいろな人が)はずだが、未だにうまくいっていない。だから、福島第一原発の事故でも官である文科省や政治家がサイエンスを語って大いに混乱した。
政治家や官僚がやるのは政治と行政である。科学的ジャッジメントはプロに任せるべきだ。プロたるサイエンティストは、政治とは一線を画してあくまでも科学的なジャッジメントを、プロの責任において政治に提言しなければならない。両者はしっかりと区別すべきだ。
日本版のCDCやACIPが必要だと主張してしばらくになるが、いっこうにそのようなものができる気配はない。政府内に委員会を作るだけではだめなのである。
例えば、厚労省はポリオワクチンについてQ&Aをもうけている。しかし、ここには制度的な記載と科学的な記載が混在している。
制度的な記載(予防接種法とか定期と任意の違いとか)。これは行政の仕事である。サイエンスにまつわるステートメント、これは「CDC」の仕事である。できれば署名入りで(入れられないはずが無い)ワクチンや感染症のプロがこのようなQ&Aを作成すべきで、官僚(技官を含む)の仕事ではないはずだ。もちろん、専門家の意見は参照しているはずだが、それがどこまで参照されているかがはっきりしないのが問題なのである。だから、御用学者なんて品のない悪口を言われたり、ない腹をさぐられたりする。このようなことを霞ヶ関に強要する国民やメディアもよくないけれど。ときに医者が行政に「診療ガイドラインを作れ」なんて要望を出してびっくりさせられる。それは僕らの仕事でしょ。
官僚はちょっと科学や医学をかじってあしを突っ込んではいけないと僕は思う。彼らの仕事は「行政」なのだから。科学者は、ちゃんと顔が見えるようにして行政とは分断された形でステートメントを行うべきだ。もう同じことを何度も言うのは疲れたけれど、同じこと何度も言わせるなよ、ほんとに。
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