よくある疾患。まとめておきましょう。
感染症BSLレポート
課題:ヘルペス性口内炎
【はじめに】
ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスⅠ型(Herpes simplex virus type 1; HSV-1)の感染により、口唇ヘルペスと呼ばれる潰瘍ができる疾患である。HSV-1は三叉神経節に潜伏し再活性化するため、ヘルペス性口内炎は再発を繰り返す。口唇に熱感、疼痛、違和感などを伴った比較的限局した小水疱の集簇を認めれば、臨床的診断は比較的容易である。
正常免疫患者におけるHSV-1感染の管理については、①初感染あるいは再感染、②重症度、③再発の頻度、が考慮される。ここでは、初感染あるいは再感染の場合に分けて述べることとする。
●初感染の場合
症状は、ときに咽頭痛を伴う歯肉口内炎と、口腔内の広い範囲における接触痛である。多くは1~6歳の小児にみられるが、それ以上の年齢でも起こる。後者の方が症状のひどい場合が多く、激しい嚥下痛のために脱水を起こすことがある。
1.抗ウイルス薬:早期のアシクロビル投与(経口、200mg five times per day、7日)が効果的との報告がある[1]。 治療のタイミングとしては、発症72時間以内の投与開始により最大の効果が得られるが、それ以降であっても、新しい病変が生じた場合や痛みが激しい場合には考慮される。
2.補助療法:局所または経口による鎮痛薬がよく用いられる。また、嚥下痛が激しく脱水状態にある場合には輸液が必要である。
口唇の痛みにはリドカイン、ジラクチン、ジラデントが有効である。リドカインを含むうがい薬は10~15分程度の鎮痛効果が期待できる。ジラクチンは処方箋なしで購入が可能であり、粘膜に付着して痛みを軽減する。ジラデントは6時間もの鎮痛効果がある。また、痛みが激しい場合には経口アヘンが用いられる。消毒薬は病変の乾燥を早めて細菌感染を減らすとされている[2]。
●再感染の場合
初感染に比べて症状が軽く、期間も短いことが多い。刺すような痛みや灼熱感といった前駆症状を自覚する患者もいる。症状が軽微なため、局所麻酔薬または消毒薬のみで軽快することが多い。
前駆症状の段階でアシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬を経口で内服することにより早期に治癒する。また、抗ウイルス薬のクリームや軟膏も効果があるとされている[3]。特に前駆症状がなく、再感染を頻発する患者に対して、アシクロビルやバラシクロビルを長期的に予防内服するという方法もあり、安全性が示されている[4]。
【参考文献】
Up To Date; “Treatment of herpes simplex virus type 1 infection in immunocompetent patients”
[1] Amir J, Harel L, Smetana Z, Varsano I. Treatment of herpes simplex gingivostomatitis with aciclovir in children: a randomised double blind placebo controlled study. BMJ 1997; 314:1800.
[2] Vestey JP, Norval M. Mucocutaneous infections with herpes simplex virus and their management. Clin Exp Dermatol 1992; 17:221.
[3] Spruance SL, Rea TL, Thoming C, et al. Penciclovir cream for the treatment of herpes simplex labialis. A randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled trial. Topical Penciclovir Collaborative Study Group. JAMA 1997; 277:1374.
[4] Worrall G. Acyclovir in recurrent herpes labialis. BMJ 1996; 312:6.
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