沖縄県立中部病院雑誌という超マイナーな(すんません)雑誌があって、そこに頼まれて書いた「自分の本の書評(というか宣伝)」。たぶん、誰も読まないと思うから、ここに再掲する。隣の頁には、集中治療業界の大立者、田中竜馬大先生が自著のワシマニュを推している。この本は実に良くできていると思うが、書評は僕の方がうまかった(と思う)。
書評 最近、出したもの
岩田健太郎 神戸大学感染症内科
僕は書評を書くのが大好きです。本をただで送ってもらってオマケに幾ばくかの金銭まで拝受できるというありがたさ。書評を書かなきゃいけないので、いただいた本は一所懸命読まざるを得ない。根が怠け者なので、何かの縛りがないと読めないのです。というわけで勉強までできてしまう。青木眞先生のマニュアル(第二版)の書評を書く光栄に属したことがありましたが、僕は朝晩真剣になってあの分厚い本を読んだのでした。それはそれは勉強になりました。書評を頼まれなければ、あの大著を通読することは困難だったことでしょう。
ただ、自分で自らの書を「評する」というのは、あまりやったことがありません。本は出してしまえばあとは読者のもので、どう読まれるかはその人の自由だと思っているからです。自分では特に評価しない。Amazonの評価とかみても、「うーん、そういう意味ではないんだけどな」とか思うこともありますが、まあどんな読み方をするのも読者の勝手だし、僕も人様の本は自己流で読んでいるので、仕方がない。
というわけで、自著の書評は恥ずかしいのでなかなかできず、まあ本の紹介、という形でやらせてくださいませ。この一年間に出したものを紹介します。
マンガで読む感染症 中外医学社
感染症は全ての臨床医にとって重要なのですが、全ての臨床医が感染症に興味を持ってくれるとは限らない。この本は「感染症なんて勉強したくないよ、興味ないね」という人ですら読破できることを目指して書いた本です。というわけで皆さんには不要です。ただ、「もっとも不快な人間とも時間をかけて対峙しなければならない」感染症屋の悲しい運命を行間から感じ取ってもらえるかもしれません。ここまで媚びねばならないのだよ、大学病院では。
市中感染症診療の考え方と進め方 IDATENセミナーテキスト編集委員会 医学書院
これは1年目の研修医が忙しい時間に通読するのには良い本だと思います。僕は急性腹症の項を書きましたが、ほとんどCopeからの援用です。良いこと書いてますね、あの本は。
Dr. 岩田の不明熱大捜査線 ケアネットDVD
中部病院出身者エース級の西垂水先生と岸本先生に出ていただいています。全4巻でコモンな現象で原因はけっこうまれな病気というねじれた不明熱を扱っています。僕が言うのも何ですが、高いです。
感染症は実在しない 構造構成的感染症学 北大路書房
指導医の皆様にどうぞ。けっこうがんばって書きました。中部病院の研修を受けながら哲学書を読めるのは僕の知る限りでは本村和久先生だけですから、研修医の皆さんは無視してください。
感染症999の謎 メディカル・サイエンス・インターナショナル
アメリカのシークレットシリーズの翻訳をやりたかったのですが版権の問題で断念。だったら自分でつくっちゃえ、と思ったのがこれ。椎木先生に感染症検査や微生物学の項をやってもらっています。感染症屋さんはみんなまじめで、予想以上の大著になってしまいました。自分でいうのも何ですが、お奨めです。
感染症外来の帰還 医学書院
豊浦(蟹江)麻記子先生に小児科の所を書いてもらっています。ファンの方はどうぞ。内容は一般外来をやっている後期研修医、指導医向きです。表紙を山本容子さんが書いているところが気に入っています。
感染症診療ガイドライン総まとめ 総合医学社
ガイドラインを比較対照できるまとめ本があると便利だなあ、と思って作った本。基本的に僕は「こんなのあると便利だよなあ」という本を作ることにしています。表紙のデザインが気に入らない。ここだけの話。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。