この話をもう少し続ける。
大阪の病院で看護師がパンデミックに罹患したとき、厚労省新型インフルエンザ対策室の官僚は「現場を見もしないで」勤務する病棟を閉じよと命じた。気骨あるその病院のICNたちはそれを暴論として拒絶したのである。
当然、看護師一人がインフルエンザになったからも言って病棟を閉じる必要はないし、また病棟を閉じるというのは大変な営為である。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100905ddm041040051000c.html
保健所にしても厚労省にしても(そして感染症研究所にしても)院内感染対策の知識も経験も不足している。病院にいれば感染症のアウトブレイクは大なり小なりかならず経験する(病院内アウトブレイクが起こってはいけないというゼロリスク信仰の前提は間違っている)。経験値は高い。ICNは6ヶ月もフルタイムで勉強して試験を合格して得る資格である。専門的知識もずっと豊富である。厚労省に感染対策のためフルに6ヶ月間を勉強に費やした人物が果たして何人いるだろうか。年という単位で実地訓練を受け、何百、何千という耐性菌感染症に対峙した人物などいるだろうか?
現場のICNのほうがはるかにそのような問題に対する解決策を熟知している。その熟知しているプロである現場のICTが素人である保健所や厚労省に報告したからといって、問題の解決がなにか改善するわけではない。恐ろしいのは、責任回避のために極端な防衛策を強いて現場を圧迫することである。このはなし、去年もしなかったっけ。
確証はまだないが、多剤耐性アシネトバクターは外からの持ち込みの可能性も高い。感受性アシネトバクターが病院内で多剤耐性化することはまれだからだ。外から持ち込んだ耐性菌に苦しんでいるのであれば、病院もまた被害者である。放火された家庭に「おまえのうちは消火の仕方がなっていない」というのがまず第一にかけられるべき言葉だろうか。
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