前にもちょっとネタになりましたが、2008年のAmerican Journal of Medicineには、市中肺炎の重症度とCRPの値が相関する、という論文が載っています。
Chalmers JD, Singanayagam A, and Hill AT. C-reactive protein is an independent predictor of severity in community acquired pneumonia. Am J Med 2008;121:219-225.
私は、かねがねCRPと市中肺炎の重症度とは相関しない、PSI(pneumonia severity index)にもCURB-65にもA-DROPにもそんなのは入っていない、と説明してきました。これを反証するデータだと思います。
まさにカール・ポパーのいうところの反証主義でして、一つでもある仮説を否定するデータを示せば、その仮説の真理性は失われるのでした。科学の常でありますし、そのように受け取り、飲み込むしかないように思います(これをまた反証するデータが出ない限り、ですが)。
ところが、この論文を良く読んでみると、実はCRPは予後に対する感度はPSIやCURB-65とどっこいどっこいなのですが、特異度はずっと低いことが分かりました。すなわち、臨床症状や既往歴から得られるPSIやCURBー65を無視し、CRPだけ見ていると患者を過大評価してしまう、ということです。余計な入院や広域抗菌薬の使用が徒に増えてしまうかもしれません。結局のところ、この論文は驚きを持って迎えたのですが、私の今のプラクティスそのものには変容をもたらすことは無いようです。多くのオリジナルな論文がそうであるように、です。
という内容のレターをAJMに投稿したらアクセプトされました。12月号掲載ですので内容は「今は」ここではご紹介できませんが(私も最近まで知りませんでしたが、ほとんどの外国の科学雑誌の論文は、「著者が」ウェブ上で公開することは著作権上問題ないのだそうです)、発表されたら読んでみてください。
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