Management of hepatic complications in HIV infected persons.
JID 2008;197:S279-
・HIV感染者が肝疾患で死亡する場合、最大の原因はC型肝炎共感染であり、次がB型肝炎感染である。
・CD4低下は肝疾患による死亡のリスクと相関している。50以下では特にリスク高い。
・ARVそのものの肝障害も要注意。
・アルコール、非アルコール性の脂肪肝も。
HBV感染
・感染経路が同じであり、共感染は多い。
・地域によっては90%の共感染(過去の感染含む)も
・米国では、HIV感染者の7−10%が慢性HBV感染有り。
・治療選択に大きく影響!
・HIV患者は全てHBVスクリーニングを受けるべき。
・nonreactiveならワクチン接種を。
・HBcIgGだけ陽性の人も、ワクチンで利益を受けるかもしれない。そう言う意味では、c抗体の検査は必要ない、という意見もある。JID 2005;191:1435-
・陽性者はe抗原やDNAも測定する。DNA陰性あるいは低レベルであれば、慎重に経過観察
・トランスアミラーゼの動きは疾患の活性と関連有り。これもフォロー。
・HCCは定期的にスクリーンする。超音波やAFPを使う。
・HIV/HBV共感染は肝関連の死亡と関連があり、CD4が低いと特にそうである。HIV感染がない場合と比べてHBVDNAレベルは高い。
・DNA高値は将来のHCCと肝硬変発症と関連有り。
・急性HBV感染は自然軽快することが多い。慢性化することも多い。
・HIVがなければ、ラミブジン3ヶ月療法に治療効果はなく、ルーチンでは用いられない。重篤な症状がある場合は、オプション。
・慢性肝炎の場合はthere is no clear consensusである。この一言に尽きる。
・全例治療派、DNAやe抗原、トランスアミラーゼに依存派など。
・European Consensus Conference guidelineでは、DNAレベル>20,000から>2000を、e抗原陽性率を持って治療するよう求めている。治療期間は不明、、、、e抗原陽性の場合、e抗体が出来てから6ヶ月治療という薦めもある。e抗原陰性であれば、生涯治療か。
インターフェロンα(pegy or standard)
・pegyのほうがよさそう。
・HIV/HBV co-infectionではtrialに乏しい。
・あまり効かない印象、、、、
ラミブジン
・NRTIだが、HBV DNA polymeraseを阻害する。もちろん、HIVにも効く。
・HIV感染者では、毎年20%でHBV耐性が出来る。
エンテカビル
・ヌクレオシドアナログ
・HBV polymeraseのpriming, reverse transcription, synthesis of positive strandすべてに阻害をかけるのが特徴。
・ラミブジン耐性になるとエンテカビル感受性も落ちる。だから、そう言う方には1mg投与(0.5mgではなく)。
・共感染でもHBVDNAのログを十分に落とせる。
・が、48週の治療で300コピー以下になったのはたったの9%。エンテカビル耐性も見つかっている。
・当初はHIVには効かないと思われていたが、RNAレベルは下がる。HIV耐性も起きるか、、、、
・共感染では、ちゃんとHAARTにのっていること!
アデフォビル
・ヌクレオ「チド」アナログ
・HIVHBV共感染での192週間の治療で十分なコピーの減弱。
・テノホビルとのcross resistance の懸念はあるが、実例はない。アデフォビルもHIVには少し効くのです。
テノホビル
・これもヌクレオチドアナログで、HIV感染に用いられる。
・アデフォビルに構造上はにている。もともとアデフォビルもHIV用に開発された薬であるが、副作用の問題でぽしゃってしまう。これを投与量を少なくしてHBV用に復活させたというわけ。で、形を変えてテノホビルがHIV用に意趣返し。1メチル基分形が違うのだとか。
・HBVに関しても、アデフォビル並の効果があるとのこと。
・ラミブジン経験者のACTG5127でも非劣性。
エムトリシタビン
・これはヌクレオシドアナログで、ラミブジンの親戚。
・48週のトライアルでも、効果はあったが13%で耐性。
・ラミブジンやエンテカビルの感受性も低下。
telbivudine
・慢性B型肝炎に認可されている。
・チミジンヌクレオシドアナログ。HIVに活性がないのが特徴
・telbivudineも使っていると耐性ができるが、同時にエムトリシタビンやラミブジンにも耐性になる。
・ARVなしの患者に使える?でも、将来3TCなんかがだめになったりしない?
多剤併用VS単剤
・GS903 エファビレンツ、ラミブジンにテノホビルかスタブディンで比較。その中にはHBV共感染あり。2剤使った群の方が1ログコピーが低かったが、統計的有意差なし。JID 1999;180:607-
・ラミブジンVSテノホビルVS両者の併用では、やはり併用療法の方がDNAコピーは減った。AIDS ;17:F7-
・こんだけ??
耐性について
・エンテカビルは耐性を作りにくいが、ラミブジン耐性があると耐性を作りやすい。
・一番いいのは、テノホビルとエンテカビル併用?
治療ガイドライン
DHHS/European Consensus Conferenceのガイドラインあり。
・ARTを使うときに、ラミブジンやエムトリシタビンに曝露されていなければ、HBV活性のある薬を2剤使用。テノホビル+ラミブジンorエムトリシタビン
・エンテカビルとテノホビルもOK.このときはラミブジン・エムトリシタビンは用いない。
・ラミブジン・エムトリシタビンに暴露があり耐性がある場合、テノホビルにこれらを噛ませる。エンテカビルをさらに加えた方がいい、という意見もあり。
・治療を止めてしまうと肝炎が増悪する危険がある。しかし、HIVばかりに注目しているとこのことを忘れてしまいがち。
・ARTを何かの都合で止める場合は肝機能のモニターを密にするか、telbivudineやアデフォビルの使用を検討する。
・もしHAARTがまだ必要がない場合は、HIV活性のあるHBVの薬を使わないのが原則である。エンテカビルも勧められない(前述)。
・ペギインターフェロンαをCD4>350に。特にgenotype Aで。
・telbivudine+low dose アデフォビルも。
・全例HIVも治療しちゃえ、という意見も。特にCD4<500で肝疾患の死亡率が高いので、500をカットオフ値にする?
妊婦には?
・スタディーには乏しいが、HBV/HIV両方治療し、生後ワクチンと免疫グロブリンが望ましいかも。
HCV共感染
・米国ではドラッグ注射による感染が多い。感染経路によりHIVとの共感染の頻度は異なる。IVドラッグの場合共感染は72-95%に登る場合もあり、性行為による感染では1-27%くらい。
急性肝炎
・治療した方がよい。慢性化を予防できる。
・治療なしでも25%で治癒するが、HIV共感染するとこの確率は低下する。8%くらい?
・ただし、急性感染の治療に関する確たるデータは乏しい。
・専門家によるお奨めでは、ペギインターフェロンα単独か、リバビリン併用で24-48週使用か?14人中10人の共感染患者で成功とのレポートあり(併用療法)。AIDS 2006;20:1157
慢性感染
・HCV抗体はすべてのHIV感染者でチェック必要。RNAで確認。
・治療方法は微妙。CD4の高いときに治療か?
・治療は180マイクログラムのペギインターフェロンα2aか1.5μg/kgペギインターフェロンα2bを皮下注で週一回、リバビリンはgenotype 2,3では800mg/day、genotype 1では体重75kg以下で1000mg/day, >75kgで1200mg/day。
・HIV共感染があると60%程度でsustained viral responseがあるので、VLが低い場合は全員治療した方が(genotypeに関わらず)よいという意見もある。治療をしない場合は肝生検は推奨されず、治療しない場合のみステージングに使用される。
・一方、ウイルス価が高い場合(>800,000IU/ml)でgenotype 1であればSVRは18%程度。特に黒人では予後が悪い。この場合はケースバイケース。肝生検でステージ0か1なら治療せずに様子みることも。あるいは治療してみて4-12週間後反応を見る、というやり方も。
・CD4<200だととりあえずHIV治療に専念。HCVは様子見。SVRも得られにくい。もっとも、これもケースバイケース。
・IFNの副作用で一番問題なのがインフルエンザ様症状、うつ症状、いらいら感、認知障害、血球減少、網膜症、ニューロパチー、自己免疫疾患の増悪など。自殺も問題。
・リバビリンの問題は用量依存性の溶血性貧血、咳嗽、消化器症状
・ddIと併用すると膵炎や乳酸血症も問題。これは絶対禁忌
・AZTと併用すると貧血が問題か。やめるか、血算を慎重にモニターするか、あるいはエリスロポイエチンを併用。
・抗うつ剤、エポ、filgrastimなどで副作用に対抗する方法も。
・新薬も開発中。telaprevirはHCV用のPI。副作用は多く耐性も出ている。フェーズ2.
・HCV感染はHIVの進行で増悪する。HAARTでひっくり返せる。生検所見でのフォローでは、HAARTにのった共感染とhCV単独感染は変わりなし。CID 2006;42:262-肝関連死亡率も低い。HAART is better than no-HAART。Lancet 2003;362:1708-
ARTと肝臓
・1−14%で重篤な肝障害。
・特に問題なのは、ネビラピン、full doseのリトナビル、tipranavir。
・アタナザビル、インジナビルではビリルビンがあがることも。ただし、これは肝障害というよりビリルビン排泄障害。可逆性で無症状。Gilbert syndromeみたいなものか。
・メカニズムは様々。ミトコンドリア障害、免疫再構築、直接毒性、過敏反応(アバカビルなど)
・肝障害のリスクが高いのは、女性、ベースラインのALTが高い、慢性HCV, HBV感染、ラミブジン中止、ネビラピン開始、リトナビル開始。
HIV associated hepatopathy
・HIV関連、と名前をつければどの臓器も障害を起こすが、肝障害はまれ。NRTIによるミトコンドリア障害?
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