ここで、CRPやその他のマーカーの有用性について、私がまとめたものを紹介します。CRPに関するデータがどんなものか、今注目されているプロカルシトニンがどのくらいなものか、ご覧ください。底本はInfectious Disease Clinics of North Americaの総説です。
検査の有用性について
・白血球やその分画で細菌感染か非細菌感染かを峻別する能力は低いとされます。極端に高い場合などは別ですが、予後決定因子としても使いにくいです。ちなみに、有名なPSI(pneumonia severity index)では白血球数については、肺炎の30日後死亡率との関連が得られませんでした。
・白血球の形態についてはどうでしょう。Dohle's body, toxic granulation, vacuolesなどがアネクドータルに紹介されていますが、厳密にはよく分かりません。
・実は、もっと役に立つのが血小板です。血小板減少は多臓器不全や予後増悪を予測する独立危険因子です。逆に、慢性炎症では血小板は高いことがおおいですね。白血球・CRPだけでプレゼンをするのはマンネリだから、今度は血小板も混ぜてみると面白いかもしれないですよ(優秀な研修医に見せるためには、ヒトと違うことをやるのが一番!)。
・severe sepsis患者の90%以上でD-ダイマーとPTの異常です。でも、これくらい頻度が高いと逆に測る意味あるんだろうか、なんて思ったりしないでもないですが、皆測る。
・乳酸レベルも近年よく測定されます。バイカーボ正常、アニオンギャップ正常でも乳酸値は高いことがよくあるそうなので(知りませんでした)、乳酸だけを独立して測る価値はあるのだそうです。上がっていれば、予後不良。
・動脈血の乳酸値と中心静脈の乳酸値はよく相関していますが、末梢静脈血の場合はそうでもないので注意が必要とのこと。末梢静脈血の乳酸値が正常であれば動脈血でも正常である可能性が高いです。しかし、末梢静脈血の乳酸値が上昇していても動脈血では上がっていないことも多いのだそう。
・CRPなどのバイオマーカーには60種類以上あるそうだ。
・IL-6、プロカルシトニン、プロテインCなど。
・細菌感染と非感染性疾患を区別するのに、プロカルシトニンとCRPはある程度の感度・特異度を持っている。それぞれ感度88%, 67%, 特異度81%, 67%。特に、CRPはスクリーニングにも確定診断にもパッとしないことは理解しておきましょう。6割台の感度・特異度、50%に毛が生えた程度の感度特異度だと、コイントスをして判断をするのとそう、大差はないのです。陽性でも4割間違い、陰性でも4割間違い。
・細菌感染とウイルス感染を区別するのには、プロカルシトニンとCRPの感度特異度はそれぞれ感度92%vs86%、特異度73%vs70%です。どちらも感度はまあまあまずまず、特異度はいまいち、というところか。
・敗血症と、非感染症のSIRSの区別に、プロカルシトニンの効果が70%程度しかなかった、という報告もあります(メタ分析 Lancet Infect Dis 2007;7:210)。
・プロカルシトニンの最大値、あるいは上昇量が予後と相関する、といわれていますが、入院時のプロカルシトニン値(そしてCRP値と白血球)は関係ないのだそうな(Crit Care Med 2006;34:2596)
Talan DA et al. Severe sepsis and septic shock in the emergency department. Infect Dis Clin N Am 22(2008)1-31
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