褥瘡感染に対する適切な抗菌薬治療期間は?
- 序論
今回のXX褥瘡感染のある患者であり、XX。抗菌薬の全身投与を行う際には治療効果と様々なリスク(副作用、耐性菌の出現など)のトレードオフを評価することが重要だと思い、適切な治療期間について調べた。
- 本論
蜂巣炎、菌血症または骨髄炎を含む重度の褥瘡感染の患者に対しては抗菌薬の全身投与を考慮する必要がある。今回は特に骨髄炎を合併した褥瘡感染における抗菌薬治療について調査した。Wongらの研究は、Ⅳ期の仙骨部褥瘡に合併した骨髄炎の治療管理に関する論文のシステマティックレビューを行ったものであり、デブリドマン後に抗菌薬投与を行った多数のケースシリーズについて分析している。いずれのケースシリーズにおいても抗菌薬投与の有無、静脈内投与または経口投与、投与期間とⅣ期の仙骨部褥瘡の治癒率との間に相関はなかった。したがって、抗菌薬の6週間以上の長期投与が仙骨骨髄炎の治療により効果的であることを示すデータはなく、一般的な慢性骨髄炎の4〜6週間を超える抗菌薬投与の期間を支持するデータもない。
最適な治療期間は得られていないが、累積されたデータから得られた次善的な治療期間が以下のように示されている。
- 潰瘍から広がる急性軟部組織感染症を治療するために、1週間以内の短期間抗菌薬を投与してもよい。ただし有効性についてエビデンスがなく、副作用、重複感染、耐性病原体といった有害事象が起こりうるため治療の長期化を避ける必要がある。
- 表在性骨皮質に限局する骨髄炎の場合は2週間、髄骨に達する骨髄炎の場合は4〜6週間の抗菌薬投与が推奨される。(6週間を超える抗菌薬投与にエビデンスがなく、合理的でないためである。)
- 結論
褥瘡感染に対する抗菌薬治療期間は、6週間を超える長期投与は避けるべきだが、最適な治療期間についてエビデンスがなく、次善的な治療期間で抗菌薬投与を行うしかない。一方で6週間以内であれば抗菌薬投与期間は治療結果を左右しないため、むしろ心理社会的介入やその他の臨床的介入に配慮するべきである。
- 参考文献
- Wong D, Holtom P, Spellberg B. Osteomyelitis Complicating Sacral Pressure Ulcers: Whether or Not to Treat With Antibiotic Therapy. Clin Infect Dis. 2019 Jan 15; 68(2): 338–342.
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