ミノサイクリンは本当にMRSA骨髄炎に効くのか?
・序論
担当症例はMRSA骨髄炎の骨掻爬術後の患者で、術後にバンコマイシンを静脈内投与された後、ミノサイクリンが処方されていた。IDSAのガイドライン[1]ではMRSA骨髄炎に対して推奨される治療法の1つにミノサイクリンが挙げられているが、その治療法は本当に効果があるのか疑問に思い、このテーマについて調べることにした。
・本論
文献を検索したところ、重篤なMRSA感染に対してミノサイクリンを用いたケースレポートをまとめた論文[2]が見つかった。1999年2月~2004年7月の間に、4例のMRSA骨髄炎に対してミノサイクリンが投与されており、うち2例のみが奏功している。ミノサイクリンは5例の皮膚組織の感染や1例の菌血症にも用いられて全例治癒したが、化膿性関節炎の1例では治癒しなかった。
また、この論文の文献レビューでは、4例のMRSA骨髄炎に対してミノサイクリンとリファンピンの併用療法が行われ、3例で奏功したと示す論文[3]も引用されている。
これらのデータにより、ミノサイクリンは皮膚組織に関するMRSA感染症には経口治療の選択肢として有用だといえるが、菌血症や骨髄炎に対して有用とは言い切れない。
この他に、ミノサイクリンのMRSA骨髄炎に対する有用性を示すデータや他の薬剤との比較研究は見つけられなかった。
・結論
ミノサイクリンはMRSA骨髄炎に対して実際に用いられており、奏功した例もあるが、有用性を示すにはデータは不十分である。また、他の薬剤より優先して使うべきか不明であるため、他の薬剤との比較研究が必要であると考える。
本症例においては、ST合剤で嘔気の副作用が出たことや、ミノサイクリンによる治療で経過は良好であることから、今後もミノサイクリンによる治療を続けて良いと考える。
[1] IDSAガイドライン MRSA https://www.idsociety.org/practice-guideline/mrsa/
[2] Jörg J. Ruhe, Thomas Monson, Robert W. Bradsher, Anupama Menon, Use of Long-Acting Tetracyclines for Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Infections: Case Series and Review of the Literature, Clinical Infectious Diseases, Volume 40, Issue 10, 15 May 2005, Pages 1429–1434
[3] Clumeck N, Marcelis L, Amiri-Lamraski MH, Gordts B. Treatment of severe staphylococcal infections with a rifampicin-minocycline association, J Antimicrob Chemother, 1984, vol. 13 Suppl C(pg. C17-22)
コメント
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