「ミカファンギンは侵襲性カンジダ症の発症予防に有効か」
【序論】 侵襲性カンジダ症の治療薬としてはミカファンギンが第1選択薬であるが、侵襲性カンジ ダ症の発症リスクの高い患者、特に造血幹細胞移植患者では感染予防のためフルコナゾー ルが主に用いられている。そのため、侵襲性カンジダ症の第1選択薬であるミカファンギン が予防に対しても効果があるのかについて以下に考察する。
【本論】 侵襲性カンジダ症を発症するリスクが高い場合、感染予防のために「予防的抗真菌薬療法」 を行うことがある。推奨される例としては、造血幹細胞移植後、ICU の重度病態患者、特定 の臓器移植患者などがある。これらの例について文献的考察を行う。造血幹細胞移植患者の 例では、造血幹細胞移植患者に対するミカファンギンとフルコナゾールによる前向き二重 盲検無作為化比較試験においてミカファンギン群の治療成功率はフルコナゾール群よりも 有意に高かった(80% vs. 73.5% ; absolute, +6.5%; 95% CI, 0.9-12%; P= 0.3)。ICU の重症 患者の例では、ICU における敗血症、複数箇所の candida colonization、多臓器不全、広域 抗菌薬使用の重症患者に対する多施設無作為化比較試験でミカファンギン群の侵襲性カン ジダ症なしでの 28 日生存率はプラセボ群と比べ有意差は得られなかった(68% vs. 60.2%; HR=1.35 [95%CI, 0.87-2.08])。また特定の臓器移植患者の例については、Giannella 氏らの 報告で真菌感染のリスクが高い肝移植患者に対しての予防的なミカファンギンの投与は標 準治療と同様の有効性が示された。しかし同様に真菌感染のリスクが高い小腸、膵臓、胸部 臓器移植に関しては文献が不足しており、ミカファンギンの有効性は不明である。 【結論】 以上から、侵襲性カンジダ症の発症リスクの高い造血幹細胞移植後や肝臓移植後の患者に 対しての予防的なミカファンギンの投与は侵襲性カンジダ症の発症予防に有効である。ミ カファンギンはアゾール系に耐性のものにも治療効果を期待できることから上記の例につ いてはフルコナゾールの代替薬として有用であると考えられる。
【参考文献】
- van Burik JA, et al. Micafungin versus fluconazole for prophylaxis against invasive fungal infections during neutropenia in patients undergoing hematopoietic stem cell transplantation. Clin Infect Dis. 2004; 39: 1407-1416.
- Timsit JF, et al. Empirical micafungin treatment and survival without invasive fungal infection in adults with ICU-Acquired Sepsis, Candida colonization, and multiple organ failure: The EMPIRICUS randomized clinical trial. JAMA 2016; 316; 1555-64.
- Maddalena Giannella, et al. Use of echinocandin prophylaxis in solid organ transplantation. Journal of Antimicrobial Chemotherapy; 2018; 73; 51-59.
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