『開胸術後どれくらいの期間で縦隔炎になる頻度が高いか』
<序論>XXX急性縦隔炎は胸骨正中切開後の発症率は0.4〜5.0%であるが、その死亡率は20%と高率である。1)入院中であれば、早期発見・加療によりその死亡率は下がるだろうが、XXXそこで、術後発症時期を明確にすることにより、入院期間を急性縦隔炎が起こりやすい期間に合わせることで死亡率は減少するのではないかと考えた。
<本論>直接的に開胸術後の発症時期を題材にしている論文は見つけることができなかったので、他の題材についての論文から引用することになった。
Bor DHらによる、胸骨正中切開後に合併した術後縦隔炎をもとにした、菌種やリスクファクターを同定し、縦隔炎の臨床的特徴を明らかにする症例対照研究では、潜伏期間は手術後3〜417日だったが、縦隔炎発症時期の中央値は7日であり、患者の3分の2は2週間以内に発症していた。2)3)
またFariñas MCらによる、開胸術後の縦隔炎におけるリスクを調べた症例対症研究では、潜伏期間は3日から339日(平均±SD:28±70日)であり、3分の2の症例で2週間以内に縦隔炎を発症していた。34の症例のうち4例は術後1ヶ月以上あけて縦隔炎を発症していた。4)
<結論>これらの論文によると、潜伏期間は術後3日から約400日と幅が広いが、3分の2は2週間以内に収まっていることがわかった。縦隔炎の発症率は0.4〜5.0%であり、さらにその3分の2は2週間以内の発症であるため、15日〜約400日での発症確率は極めて低く、また縦隔炎がいつ発症するか的を絞ることは難しいと考えられる。そのため、いくら発症した場合の死亡率を下げるためだと言っても、起こるか分からない縦隔炎のために400日入院させるのは現実的ではない。引用した論文が少ないため断定することはできないが、3分の2の症例で2週間以内の発症であること、34例のうち30例は1ヶ月で発症していることから、入院期間は2週間から1ヶ月が妥当である。ただし、この入院期間は縦隔炎の発症期間のみの観点からであり、実臨床では他の要因も加味した上で退院日を決定する必要がある。
<参考文献>
1)ハリソン内科学第5版
2)Up to Date postoperative mediastinitis after cardiac surgery: clinical features
3)Bor DH et al. Mediastinitis after cardiovascular surgery. Rev Infect Dis. 1983;5(5):885.
4) Fariñas MC et al. Suppurative mediastinitis after open-heart surgery: a case-control study covering a seven-year period in Santander, Spain. Clin Infect Dis. 1995;20(2):272.
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