感染症内科BSLレポート
『重症筋無力症(MG)無症状の胸腺腫患者に対し血清抗アセチルコリン受容体抗体(ARAb)を計測する意義とは?』
【序論】
XXX胸腺腫はMGとの関連が強い疾患ではあるが、XX術前にARAbが計測されていたことを疑問に思い、文献を検索した。
【本論】
胸腺腫瘍診療ガイドライン2018年版では、胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合、ARAbの測定を行うよう推奨する〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:D,合意率:100%〕との記載があった。そのエビデンスとなる、MGの臨床経過、病歴、所見をレトロスペクティブに評価し、胸腺摘除術を受けた患者のARAbの値との相関を調べた論文がある。
胸腺摘除術を受けた胸腺腫患者67人、及びコントロール群として他の胸腺腫瘍の患者11人が登録された。他の胸腺腫瘍の患者11人は一人もMGを患っていなかったが(p<0.0001)、胸腺腫患者67人のうち12人は術前にMGを患っており、全員のARAbは陽性だった。残りの55人は術前にMGを患っておらず、うち13人(24%)が術前ARAb陽性で、42人(76%)が術前ARAb陰性だった。5人が胸腺摘除術の3〜46ヵ月後にMGを発症し、3人は術前ARAb陽性で2人は術前ARAb陰性だったが、MG発症後のARAbは5人とも陽性となった。術前ARAb陽性の患者では胸腺摘除後のMG発症率が23%(3/13)だったのに対し、術前ARAb陰性の患者では4.7%(2/42)であり、術前ARAbが高値であることは胸腺摘出後のMG発症の危険因子となることを示唆する。(p=0.045)
【結論】
以上より、胸腺上皮性腫瘍が疑われる場合、術前にARAbの測定を行うことは、術後MGの経過を予測するために重要であると考えられる。
(参考文献)
1. 肺癌診療ガイドライン2018年度版
2. Postthymectomy myasthenia gravis: relationship with thymoma and antiacetylcholine receptor antibody. Ann Thorac Surg. 2008 Sep;86(3):941-5.
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